国の庇護の下、安定的な価格で電気を供給してきたが…
エネルギーを取り巻く変化について取り上げるにあたり、最も身近なトピックである「電力自由化」について、ここで改めて説明したいと思います。そもそも、なぜ日本は、電力の自由化に踏み切ったのでしょうか。
ここでまず、自由化以前の日本の電力業界の歴史を簡単に振り返ってみましょう。戦後1945年から約50年間、電力事業は地域独占体制で運営されました。関東には東京電力、関西には関西電力、九州には九州電力と地域ごとに大きな電力会社がひとつずつ存在し、それぞれが各地域の「発電・送電・配電・売電」の業務を一気通貫で行ってきました。
戦後の混乱期から日本が脱するには、とにかく企業活動を活性化させることが不可欠でした。そのため、まずは人々の暮らしのライフラインであり、経済活動の生命線のひとつである電気を作る電力会社については、地域独占体制を敷き、過度な企業競争から国が保護し育てることによって、体力をつけさせたのです。
電力会社は、電気を供給するだけでなく、それぞれの地域の代表企業として、雇用や福利の面でも地元に多大な貢献をしていきました。
日本経済が急速に成長した1970年代の高度経済成長期は、こうした地域独占型の電力会社が、国の庇護の下に確実に安定的な価格で電気を供給することが日本全体にとって非常に効果的な時代でした。
[図表]一般電気事業者の供給区域(地域独占の区域)
手強い海外企業…求められた新しいサービス
しかし、戦後50年以上が経過し、時代のニーズがガラリと変わりました。ビジネスのスピードが速くなり、企業の競争相手は、国内だけでなく世界へ広がりました。企業は、それまでよりも早いサイクルで新しいサービスや付加価値の高い商品を市場に投入することが求められ、また多様な国々の企業を相手に闘っていかなくてはいけない時代に突入したのです。
企業活動を下支えする電力業界にも、こうした時代の変化への対応が求められました。それは、従来のやり方を見直し、電力会社そのものに変化を求める声でした。そのために国は、それまでの地域独占型を見直し、異分野の新しい企業や人々にも電力業界に参入してもらうことで、電力業界自体を活性化させることを決めました。
そして、1995年からまずは発電の自由化から始まり、2000年から一部小売りの自由化となり、2016年4月には家庭への小売りを含めた全面自由化となったのです。私たち一般消費者にはあまり知られていないことですが、電力の自由化が始まったのは、実は20年以上前のことなのです。