2017年3月、中国の全国人民代表大会において、李克強首相が今年の経済成長率の目標を6.5%前後にすると発表しました。この数値は、2016年の実績である6.7%よりも低い上に、中国経済は更なる下振れリスクを抱えているという懸念もあります。本連載では、中国経済が抱える課題について見ていきます。

2016年の実績よりも低い今年の目標値

中国経済の昨年成長率は前年比6.7%増、当初の成長目標6.5〜7%を達成したが、地域毎の動向には大きなばらつきがあった。本年3月初めに開かれた全人代で李克強首相が行った政府工作(活動)報告では、本年の成長率目標が6.5%前後(左右)と設定された。

 

昨年の目標、また実績6.7%を下回る目標設定で、大方の事前予想通りではあったが、報告では目標の言及に続き、例年の報告には見られない「実際の業務の過程でよりよい結果を獲得することを目指す(争取)」との文言が付け加えられ、6.5%が「底線」、目標の下限であることが明示された。目標を引き下げることについて、政府内で議論があったことを窺わせるものだ。実際、この文言があることを理由に、「目標が引き下げられた」との言い方は必ずしも適切でないとの見方もある(3月5日付財新網)。

 

ただ、現実問題として、17年中国経済はいくつかの下振れリスクを抱えている。目標を達成するためには、経済を不動産依存や資源依存から脱却させ、産業構造の高度化を図ることができるかが鍵になる。

全国唯一のマイナス成長に落ち込んだ遼寧省

2016年は全体としては目標に沿った成長率となったが、31省市区のうち約4分の1は当初の年目標を達成できなかった(図表1)。特に、鉄鋼や石炭など生産能力過剰産業への依存が強い遼寧、山西、黒龍江が全国成長を下回った(なお、全国平均を下回るのが3つの省だけということ自体、中央政府が発表する全国GDPと、各地方政府が発表する地方GDPに整合性がないことを示している)。

 

唯一マイナス成長の遼寧は、汚職問題で省全人代議員の半数以上が辞職するという政治混乱が経済低迷に拍車をかけた他、2011〜14年の財政収入が約20%(最大は14年23%)「注水」、水増しされていたなど、長年行われてきた統計のねつ造を是正した(2017年1月遼寧省全人代で陳求発省長発言、2017年1月18日付人民日報他各誌)反動という要因も考えられる。

 

(図表1)2016年省市区別成長率と17年成長率目標

(注)網掛けは全国成長率を下回っている地域。
(出所)2017年2月7日付21世紀経済報道、2月21日付挑佣網等より筆者作成。
(注)網掛けは全国成長率を下回っている地域。
(出所)2017年2月7日付21世紀経済報道、2月21日付挑佣網等より筆者作成。

 

 

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