明確な相関が見られる「経済成長率」と「不動産市況」
昨年の不動産価格高騰は、購買力の高まりや実需増というより、15年来の住宅購入制限緩和という政策要因や、信用膨張という金融要因に支えられている面が大きい。「去産能」と並んで、「去庫存」、住宅在庫解消は供給側構造改革の柱とされていたためだ。
そもそも人口動態から見て、かつての黄金期は終わったとされる中での高騰は、15〜16年の株価急落、15年8月の人民元基準値切り下げ(いわゆる8.11)以降の人民元相場下落に次いで生じた、中国経済の新たなリスクと受け止められている(2016年9月21日付第一財経)。
過去、中国経済の成長率と不動産市況との間には、明確な相関が見られてきた(図表)。15年後半以降、両者の相関が薄れているように見えるが(不動産価格高騰にもかかわらず、成長率は鈍化している)、そもそも近年、潜在成長率が低下している中で、むしろ不動産価格高騰で6%台後半の成長が維持されていると見るべきだろう。すでに16年9月以降、少なくとも20以上の主要都市が再び住宅購入制限措置を導入し、不動産市況は冷え込み始めているが、市況を抑えようとすると、景気に下押し圧力が加わるというジレンマに直面している。
【図表】成長率と百都市不動産価格指数
早急に脱却が求められる不動産依存と資源依存
経済を不動産依存、資源依存から脱却させ、また非効率な重厚長大国企を改革することは、これまで5ヶ年計画などで中期課題として指摘され続けてきたことだ。ただ2017年は、これら課題を早急に克服していかなければ、短期的な景気にもマイナスの影響が出るおそれが高まっている。言い換えれば、中期課題だとしてゆっくり解決する時間的余裕がなくなりつつある局面に来ているということだろう。
中国経済が17年、目標の6.5%前後の成長、さらには、中期的に第13次5ヶ年計画で想定する6%台半ば〜後半の安定的な成長を確保できるかどうか、鍵を握るのは中期課題の早期克服だ。
(末尾注)各種数値は文中明示している出所の他、中国国家統計局、人民銀行、銀行監督委、個別銀行年度営業報告、および経済参考報等の中国地元経済専門誌報道による。