前回は、著しい経済成長を遂げている西部地域について解説しました。今回は、不良債権が中国東北部、中西部に蔓延している理由について取り上げます。※本連載では、中国経済の下振れリスク、その抱える課題について探っていきます。

西部の不良債権比率が2.24%ポイント上昇した銀行も

前回の続きです。

 

このように、金額的には東部沿海部がなお大きいが、浙江や江蘇では若干改善傾向が見られる。浙江は15年比、金額で32億元、比率で0.19%ポイント低下し、12年以来の「双降」となった。また江蘇は15年200億元増に対し、16年は40億元増に止まった。他方で、不良債権は次第に東北部や中西部に蔓延している。

 

11省市区のうち、不良債権比率が高い5つの省市のうち、4つが東北部または北部だ。中西部についても例えば、中信銀行の16年末不良債権総額485.80億元(前年比34.76%増)のうち316.35億元、65.12%が環渤海、長江三角州、中部に集中しており、増加ベースで見ると、中部51億元が最も大きく、次いで西部44.53億元、両地区で増加分の76.24%を占めた。同じく中堅の平安銀行の16年末不良債権比率は前年比0.29%ポイント上昇し1.74%だったが(商業、製造業向け債権が主)、地区別の状況を見ると(上期ベース)、南部、北部が各々0.76%から0.91%、0.79%から1.21%へ上昇に止まったのに対し、西部は1.62%から2.12%へと大幅に上昇した。

 

招商銀行の16年末不良債権総額は611.21億元(比率1.87%、前年比0.19%ポイント上昇)で、西部、長江三角州、中部に集中しているが、上期末比、長江三角州、中部の不良債権比率が各々0.34%ポイント、0.16%ポイント低下したのに対し、西部は2.24%ポイントの大幅上昇だった。不良債権増加の52%が西部、また70%が製造業と採掘業の2つの産業に集中した。不良債権の「重災区」とされる生産能力過剰産業、リスク対抗能力の弱い中小企業が多く、信用リスクが顕在化したたためだ。

当局は過剰生産能力の解消を求めるが・・・

東北部についても、鉄鋼、石炭、セメントなどの生産能力過剰産業を抱え、景気低迷が深刻なことが影響している。

 

全国的に生産能力過剰が深刻な鉄鋼について、発展改革委は16年45百万トン、16〜20年の5年間で1.5億トンの粗鋼生産能力を圧縮すること、石炭については16年2.5億トン、その後3〜5年かけて5億トン程度圧縮するという目標を掲げ、何れも目標を年末前に達成したとしている(その後、17年目標は、3月全人代での政府活動報告で鉄鋼5千万トン、石炭1.5億トン以上と設定された)。

 

ただ、河北の鉄鋼、同じく過剰生産能力を抱える黒龍江のセメント産業などで、行政意見に違反して設備の増強を行っている企業が多い他、河北の鉄鋼産業は「単に長期間稼働休止していた設備を処分しただけ」(2016年11月25日付証券日報他)といったことも指摘されている。もっと実質的な過剰設備削減が行われていたとした場合、不良債権はもっと増加していた可能性がある。

 

当然ながら、同じ地域でも銀行によって、また同じ銀行でも地域によって、状況は大きく異なる。例えば昨年上期、工商銀行の珠海三角州の不良債権比率は2.1%だが、中部地区は1.4%、また同じ西部地区でも、農業銀行が3.2%であったのに対し、中信銀行は1%に止まった。総じて大型銀行の不良債権は基本的に地域のマクロ経済状況の影響を受けるのに対し、中小銀行の場合、それに加え、組織管理面での弱さ、また地方の拠点に行くほどそうした傾向が強いという要因も大きいと見られる。

 

 

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