沿海部から西部へ産業移転の動きも
前回は、経済が伸び悩む東北部地域について紹介した。他方、重慶、西蔵、貴州など一部西部地域の成長率は際立って高い。中央政府の政策重点地域として、鉄道、道路、水運などの大規模インフラ投資が活発なこと(発展改革委員会によると、16年の西部大開発重点プロジェクト新規着工30、投資総額7438億元)、沿海部からの産業移転だけでなく、自動車、IT、軍用航空関連で一大産業基地建設が進むなど、沿海部より比較優位を持つ分野まで現れていることが背景にある。
昨年、重慶では2大産業の自動車、電子部品が工業生産の55%を占め、引き続き経済をけん引する他、バイオ、新素材、環境関連等のいわゆる戦略新興製造業生産が前年比50%超増加した。貴州でもビッグデータが主導するコンピューター、電子・通信機器製造が66.6%増、ハイテク関連投資が56.7%増など、新興産業が経済をけん引する傾向が顕著だ。
低迷する東北部の中では吉林のみが6.9%と全国成長率を上回った。ハイテク関連製造14.3%増、健康・医療産業10.3%増(1〜11月)と高く、産業構造高度化が功を奏している。
全国総工業生産伸びが6%増に止まる中で、ハイテク関連製造、装備製造が各々10.8%増、9.5%増と相対的に高い伸びだが、それはこれらの地域がけん引しているものだ(図表3)。なお17年1〜2月も引き続き、ハイテク製造、装備製造前年比は各々、12.6%、11.9%増と、総工業生産6.3%増を大きく上回る伸びを示している。
(図表3)
当局公表不良債権でも増加傾向が顕著
商業銀行不良債権の分布にも変化がある。銀行監督委員会の公表値は政治的色彩の強い地方政府や国企向け融資を原則不良債権と見なしていないことから、実態を過小評価していると言われるが、その公表値でも近年増加傾向が顕著だ。2015年末1.27兆元(1.67%)から16年末1.51兆元(1.74%)へと増加,「関注」と呼ばれる要注意債権も16年末は9月比で若干減少したが(1246億元減)、15年末2.89兆元(3.79%)、16年9月末3.5兆元(4.1%)と過去最高を更新し続けた(図表4)。
90日以上金利返済が遅延すると不良債権に認定されてしまうため、「東挪西借」、あちこちから借金して金利返済を優先し、なんとか「関注」に止まっている企業が多いためという(2016年12月21日付第一財経)。
(図表4)銀行不良債権比率
2017年3月初時点で、11の省市区(江蘇、浙江、河南、河北、山東、遼寧、吉林、上海、貴州、厦門、寧夏)の地区銀行監督委員会が各省市の16年末時点の不良債権状況を公表している。それによると、浙江(1777億元)、広東(1150億元)、山東(1397億元)、江蘇(1262億元)、遼寧(1145億元)の不良債権金額が大きく、その他、河南が1000億元を超えたもようだ。
比率では吉林(3.85%)、遼寧(2.96%)、河南(2.9%)、寧夏(2.63%)が高水準で、次いで河北、浙江、山東が各々2.2%、2.17%、2.14%だ。他方、11省市区の中で最も低い上海の不良債権比率は0.68%、吉林の5分の1と、地域間で大きな差が生じている。