地理(Geo)+人口統計(Demographics)
国勢調査など公開されている統計情報と独自に調査した市場調査(アンケート調査)から居住地域の類似性に基づき分類したものを「ジオデモグラフィックス」分類という。「ジオデモグラフィックス」とは地理(Geo)と人口統計(Demographics)の二つのことばを合成した造語だ。人口統計とは性別、年齢、職業、収入、家族構成など個人や集団を特徴づける属性情報のことを指す。これと住所データが結びついて地理的情報が加味されたものがジオデモグラフィックス分類となる。
八〇年代後半から英国・米国で発展した、マイクロ・マーケティングによるセグメンテーション手法の一つで、人口統計データ(国勢調査などのセンサスデータ)から数理統計的な手法で居住地域を分類したものだ。どのような特徴を持った集団がその地域に多く住んでいるのか、住んでいる人たちの類似性に注目した分類手法の一つだ。「下町のアパート」、「山の手の高級住宅地」といった表現は地理的な違いと家屋を結び付けたもので、文学など登場人物のキャラクター設定に多く用いられてきた手法でもある。
庶民的な人が多い場所の代表としての「下町」、水はけがよく日当たりのよい台地上には富裕層が多く住むことから「山の手」という地形が居住者のイメージを説明する言葉となった。古くは、「芦屋夫人」最近では港区白金台の「シロガネーゼ」などと特定の地名をもとに富裕層のご婦人たちを呼ぶことと、ジオデモグラフィックスの考え方には共通点も多い。ただし、数理統計的手法による分類であるため、定量的なマーケティングに応用することができるメリットがある。
地域の特性を示す「客観的な指標」に
日本では95年の国勢調査から全国約21万の小地域単位(およそ大字町丁目単位)で人口、世帯数、世帯規模、家族構成、住居形態、教育、産業分類、従業上の地位などが公表されるようになった(もちろんこれらのデータは、個人を特定することができないように配慮され秘匿措置がとられている)ことから、北海道から沖縄まで網羅的に居住者タイプを分類することができるようになった。居住地域を類型化したものには公的機関、研究機関、民間企業などがそれぞれの立場で提供している。
イオンモール株式会社でマスタープランづくりに携わる企画開発部担当部長の福田律子氏は「商業施設をデザインする場合、団塊の世代のマーケットといっただけではおおざっぱすぎる。田舎と都市部では同じ団塊の世代といっても消費パターンや趣味嗜好も違う。当然地域的な違いに注目したマーケティングをしなければ今後お客様に支持される商業施設は創れない。ところがこれまで、リアルな地域の違いを関係者と共有するのは、とても骨の折れることでした。イメージで語るだけでなく客観的な指標がなくてはなりません」と指摘する。ジオデモグラフィックス分類を共通の言語にすることによって深みのある商圏分析、地域分析をシンプルかつ迅速に実現することができる。