今回は、リーマンショック前後で、大きく様変わりした国際金融界の現況を見ていきます。※本連載は、銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上の豊富な取材経験をもち、現在も各種媒体で健筆をふるうジャーナリスト・齋藤裕氏の著書、『金融業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線を徹底レポートします。

新たなビジネスモデルの構築を迫られる金融界

日本を含む世界の銀行、証券、保険会社といった金融機関は、90年代の中頃から急速に進行してきた「グローバル化」に対し、生き残りを賭けて時間とカネを費やしてきた。

 

そして、邦銀はバブル時代に一時期世界に君臨はしたものの、2000年以降はバブル崩壊で不良債権を大量に抱えて軒並み陥落。

 

反対に、台頭したのが米国発の金融自由化に後押しされたゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーといった欧・米の投資銀行タイプの金融機関。ハイリスク・ハイリターン型のカジノ主義が市場を占有して巨額の利益を稼いだ。

 

しかし、2008年9月の米国発の金融危機を境に、こうしたカジノ金融主義が否定され、新しい金融ルールがうまれた。

 

グローバル化と金融自由化では、巨大な資本を持ち、大きなリスクを取った金融機関に大きな収益が集まった。しかし、極限にまでリスクを膨らませて収益を高めようとした、行き過ぎた自由主義・強欲主義がリーマンショックという形を伴って破綻。

 

それまで世界の金融市場に君臨していた有力金融機関は、新たなビジネスモデルの構築に迫られるという厳しい環境に追い込まれている。

 

日本の金融機関も例外ではない。欧米の金融機関のビジネスモデルを真似て体制をつくり「これから稼ぐぞ」と宣言した直後に金融危機が起こり、メガバンクをはじめ、大手証券、生・損保は独自のビジネスモデルを作れるかが問われている。

中国リスクの高まりによる海外戦略の見直しも課題に

この日本の金融機関が今、最も注意深く見つめているのが世界の金融動向。リーマンショック後、日本のメガバンク、大手証券、生・損保は、金融市場の復活課程でプレゼンスを高め、良好な収益機会を得てきた。特にメガバンクは、融資額を飛躍的に高めて世界のトップランナーに躍り出た。

 

では、何が日本の金融機関飛躍のチャンスになったかといえば、リーマンショック後、米国金融界が一時的だったとはいえ、弱体化したこと。また、日・米・欧・中国などが超金融緩和策を採用した結果、これらのカネがアジアを中心とした新興国に流入してGDPを膨らませ、邦銀の海外融資額も膨らませることが出来た。とくに中国では4兆元の景気対策で経済は上向き、世界経済は中国需要で救われた。

 

そして、中国は世界経済の成長の半分を稼ぎ出し、2000年には日本を抜いて世界2位の名目国内総生産(GDP)に躍り出た。が、この時の景気刺激策が過剰投資と過剰債務の問題となって、現在の中国のバブル崩壊が言われだし、国際経済の攪乱要因になっている。

 

リーマンショックは米国発の「金融」型危機だったが、いま、懸念されているのは実物である消費・生産財需要減による中国発ショックで、もし起きた場合、世界経済にどのような影響をもたらすかだ。最近の中国成長の鈍化は世界経済の停滞を招いているが、今後どのようなリスクを世界経済・金融にもたらすかで世界の金融界は疑心暗鬼になっている。

 

[図表]中国の外貨準備高の推移

資料:中国人民銀行
資料:中国人民銀行

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