今回は、ニクソン・ショックが起こった70年代以降激変した、金融界の歴史を振り返ります。※本連載は、銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上の豊富な取材経験をもち、現在も各種媒体で健筆をふるうジャーナリスト・齋藤裕氏の著書、『金融業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線を徹底レポートします。

絶頂期は終わり、「踊り場」に来ている資本主義

この、国際金融の移り変わりは単なる景気循環に由来するのでは無いことが徐々に解ってきた。根底には、「資本主義世界」の移り変わりがある。

 

銀行などの国際化・グローバル化は、経済の国際化・グローバル化を背景にしている。その国際化・グローバル化は、成長を求めてビジネスを国内から遠く海外に求めたが、拡大が未来永劫続くことはあり得ない。

 

ニクソン・ショックが起こった1970年代を境に、資本主義の絶頂期は終わり、いま資本主義そのものが踊り場に来ている。それを証明しているのが、70年代以降に起こった様々な金融事変だ。

世界経済を震撼させた「金ドル交換停止」

簡単に、一体何が国際金融界の世界に起きていたのかを見てみよう。

 

1971年8月15日。全てこの日から始まった。後に「ニクソン・ショック」といわれた「金ドル交換停止」は世界経済を震撼させた。当時の米国は、財政・貿易赤字拡大、ドルの大量流出などでドル本位制による金とドルとの交換に応じるのが難しくなっていた。金融覇権国米の凋落の始まりだった。

 

この米国の凋落は、一方でサウジアラビアなどの産油国の資源ナショナリズムの高揚を生み、石油価格の決定権が米国石油メジャーから産油国に移った。そして、2度のオイルショック(石油価格の引き上げ)で発生した大量のオイル・マネーと銀行マネーを、積極的に取り入れたのが国内開発を積極化させた中南米諸国。

 

しかし、結果的に返済不能に陥り1982年には債務危機が発生し、ブラジルは1987年2月にデフォルト(対外債務の利払い停止)を宣言した。

 

凋落した米国の威信を高めようとしたのが、レーガン政権による「レーガノミクス」。「強いアメリカ」を演出しドル高政策を採ったが、輸出減少・輸入増加で財政赤字拡大・資本収支悪化が続いた。

 

そして、米国は1985年9月、先進5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の大蔵大臣(米国は財務長官)と中央銀行総裁が集まり、ドル安に向けたG5各国の協調行動への合意、いわゆる「プラザ合意」を取り付けた。

 

「基軸通貨であるドルに対して、参加各国の通貨を一律10〜12%幅で切り上げ、そのための方法として参加各国は外国為替市場で協調介入をおこなう」というもので、このドル安によって米国の輸出競争力を高め、貿易赤字を減らそうとした。

 

このトバッチリを受けた一つが日本。ドル安政策により円高が進んだことで、輸出が減少し国内景気は低迷。そこで、日本銀行は低金利政策に踏み切ったが、金融機関による過度の貸し出しで不動産・株式など資産価格が高騰した。いわゆるバブル景気だ。

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