保険料等収入トップを争う日本生命と第一生命保険
銀行に比べて、再編の動きが鈍かった生命保険、損害保険の両業界もここ数年でガラリと環境が変わった。
生保業界は、2004年に明治生命と安田生命の統合以来、長い間業界の顔ぶれは変わらなかったが、2016年3月に、日本生命が業界8位の三井生命保険の約8割の株式を取得して買収し、子会社化したことで、にわかに再編ムードが高まった。
日本生命は、2015年3月に発表された新中期経営計画(2015〜17年度)で、消極的だったM&A(買収・合併)を視野に、海外保険会社への出資などに今後10年間で最大1兆5000億円を投じることを発表した。また国内でも、保険商品を販売する子会社の買収も検討するとした。
背景には、2015年3月期決算で、売上高にあたる保険料等収入で戦後初めて第一生命保険に抜かれたことがある。長く業界の盟主であった日本生命にとって、トップの座を奪われることは許し難い事だった。
その後、三井生命の買収で、2016年決算では再び業界第1位に返り咲いたが、第一生命との覇権争いは、今後、国内外の生命保険会社買収となって再三再四の再編に繋がる可能性は高い。
MS&ADが米保険アムリンを買収…新たな再編の兆しに
損害保険業界の再編は、2004年10月、持株会社のミレアホールディングスの下で経営統合した東京海上火災保険と日動火災海上保険が合併し、東京海上日動火災保険が誕生。
2010年4月には、当時業界2位だった三井住友海上グループホールディングスと、あいおい損害保険(同4位)、ニッセイ同和損害保険(同6位)の経営統合で「MS&ADインシュアランスグループHD」が誕生。3社合計の保険料収入は3兆円に迫る規模となり、それまでの業界トップであった東京海上ホールディングスを追い越した。
また、同時期に損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が統合した「NKSJHD」(現SONPOグループ)も発足し、これで、損保業界は東京海上HDと合わせた「損保3メガ体制」に突入した。
この損保3メガ体制で、しばらく落ち着いていた。しかし、2016年2月にMS&ADグループが総額約6420億円で英国損害保険大手アムリンを買収し、東京海上グループを完全に視野に捉えたことで、覇権争いに再び火がついて、新たな再編の兆しになっている。
2016年3月期決算では、業界トップの東京海上グループと業界2位のMS&ADグループとの正味収入保険料(連結)の差は僅か1868億円。
東京海上グループは、今後も2015年10月に買収し、既に連結利益に貢献しているアメリカのスペシャリティ保険グループ HCC Insurance Holdings が利益を押し上げると想定しているが、MS&ADが米保険アムリンを買収したことで、両グループのトップ争いをさらに激化させているのは間違いない。