銀行業界で年々存在感を増す「チャイナマネー」
ここ数年、国際世界での中国の台頭が注目されてきた。政治・軍事力の拡大に加えて、GDP世界第2位の経済力を背景に、銀行業界でも「チャイナマネー」が存在感を増しているからだ。
例えば、米調査会社SNLフィナンシャルが世界の銀行の総資産を比較した2015年のランキングでは、上位5行のうち4行を中国勢が占めている。総資産のトップは中国工商銀行の3兆5000億ドル(約435兆円)。2位が中国建設銀行、3位が中国農業銀行と続き、5位が中国銀行だった。
中国以外から5位以内に入ったのは、4位の英HSBCのみだった。米国最大のJPモルガン・チェースは2兆6000億ドルで6位。日本の三菱UFJフィナンシャル・グループは8位だ。
[図表]世界ベストバンク 総資産トップ10
ただ、質的な面では日本の銀行の評価が国際金融界では高い。日本の銀行は、日系企業の海外進出に合わせた融資のほか、現地企業の貸出しや為替決済など様々なサービスによる手数料収入を得ている。これに対して、中国系銀行は中国企業の海外部門への融資による金利収入に頼っており、経営の安定性に欠けると国際金融界では見られている。
2015年の中国は、世界にその存在をアピールした年になった。中国が主導する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に、予想を超える21ヵ国が合意したが、そのAIIBに米国の反対を押し切って英国が参加を表明したのだ。
一方で、経済面では停滞払拭のために行なった元の切り下げで株価が急落し世界を揺るがした「中国ショック」もあった。そして、この年の11月にはIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)構成通貨へ人民元が採用された。
軍事力まで動員!? 激化する「覇権国」をめぐる争い
米国と中国の覇権を巡っての駆け引きが年々激しくなっている。中国は、アメリカが推進するTPPを経済的な対中国包囲網と見て警戒する一方で、アメリカは、AIIBを日米が主導する「アジア開発銀行(ADB)」に挑戦する存在と判断し、先進7ヵ国(G7)メンバー国には参加しないよう求めたが、イギリスが参加を表明した。
中国主導によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設に関しては早くから、戦後の国際金融システムが破壊され、延いては世界支配の領主が米国から中国に変わる第一歩になるのでは、との懸念が生まれていた。いわば、米国支配構造に対する中国の反乱というわけだ。
米中はいま、経済力だけでなく軍事力まで動員してその覇権の争奪戦をしている。中国が仕掛けるAIIBと、米国主導のTPPがその最前線だ。前者はアジアの新興国がインフラを建設する際の資金を融資するための金融機関で、後者は日米を中心に太平洋を取り巻く12カ国が参加した自由貿易協定。
米国主導のTPPは、アジア太平洋において自由化度の高い貿易圏を作ろうという試みだ。参加国は当然自国の市場を開放することを求められる。TPPによる包囲圧力を警戒した中国が、対抗策として打ち出したのが「一帯一路」構想だ。