管理事業者なら加入したい「請負業者賠償責任保険」
前回に引き続き、空き家管理の建物管理について見ていきます。
(13)管理事業者の賠償責任保険
空き家管理事業者は、依頼者や第三者への賠償責任に対する保険に加入します。
空き家管理の業務管理をいくら徹底したとしても、事故が起きる可能性を完全になくすことはできません。
●清掃後に窓を閉め忘れ、吹き込んだ雨で家財が濡れてカビが生じた。
●鍵を閉め忘れたため、泥棒が侵入して家財を盗まれた。
●電気を消し忘れ、無駄な電気代が掛かってしまった。
●作業中に建物や家財に傷をつけてしまった。
このような空き家の管理業務や管理する空き家に起因する偶発的な事故で、管理事業者が法律上の賠償責任を負担することにより被る損害を補償する保険は、管理事業者が業務を行う上で必要不可欠です。
これらの損害を賠償する保険として、これまで「請負業者賠償責任保険」という業務内容に応じて保険会社が個別に査定・設定をする商品がありましたが、いわゆるオーダーメイドの保険で小規模事業者の加入は容易ではありませんでした。しかし、平成29年1月に、空き家管理事業者向けの「空き家賠償責任保険」が発売され、状況が大きく変わりました。
小規模な空き家管理事業者でも加入できるだけでなく、「空き家賠償責任保険」には、所有者の工作物責任による賠償責任に対する保険がセットになっているものもあり、このような保険への加入の有無が、消費者が空き家管理業者を選択する際の一つの判断材料になっていくでしょう。
(14)専門的な建物検査
契約受託時や大きな自然災害があった後、あるいは空き家管理が長期に及ぶ場合の契約更新時、もしくはその他管理事業者が必要と認めた場合などに、専門家による建物検査を行うことは、危険個所の早期発見や建物の劣化診断などに有益で、効果的な予防措置につなげることができます。
これら建物検査には、耐震診断やシロアリ調査、インスペクション(目視による住宅診断)などがあり、建築関連業を中心に様々な事業者、機関、資格者などがこれらを実施しています。
※空き家管理や空き家保険等の関係で建物検査を実施している公的機関や認定専門資格士は、現在のところ見当たりません。
空き家所有者を特定する方法とは?
(15)報告
依頼者への定期報告や随時報告は重要で、管理業務報告と管理物件報告があります。
管理業務報告は、実施した業務内容の報告で、作業報告や現況報告がこれにあたり、写真等を添付して具体的に管理物件の状態を報告します。管理物件報告は管理物件の劣化状況や動作不良、損傷など不具合になった部分を報告するとともに、専門調査や改善・補修等の必要がある場合はその提案を行います。
その他、第三者から依頼者への問い合わせや連絡・通知などについて、空き家管理事業者がそれらについて依頼者の窓口となる場合は、報告事項に含むことになります。
(16)空き家所有者等(権利者)の調査、特定
「空き家のある所に所有者はいない」のは当たり前のことですが、所有者に対して空き家を適正に管理するよう求める場合などには、空き家の所有者を特定する必要があります。空き家の所有者等の特定方法としては、不動産登記情報による調査、近隣住民への聞き取り調査、空き家住所への手紙の送付(転送による配達)等があります。
不動産登記情報による調査では、相続登記や住所変更登記が行われていないなどにより、登記名義人と真の所有者が異なっていたり、住所が不明であったりするケースが多く見られます。近隣や自治会などへの聞き取りでは、プライバシーの問題があり、簡単に聞き出せるものではありません。また、転送の手続きがされていない場合や正しい宛名が把握できていない場合は、手紙を送付しても相手方に届く可能性はありません。このように、空き家所有者を特定することは、容易ではありません。
一方、空家等対策特別措置法(第10条)により、空き家の所在する市町村長は、固定資産税の課税情報(氏名その他の空き家等の所有者等に関するもの)を、必要な限度において内部利用できることになりました。このような空き家所有者の情報を市町村から聞き出すことはできませんが、「市町村が空き家所有者に連絡して管理事業者を紹介する。」といった行政と民間の連携は、今後促進される可能性があります。
なお、民法に基づく財産管理制度として、不在者(「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者」を言います。)が、その財産の管理人を置かなかったとき、あるいは、相続財産につき相続人のあることが明らかでないときに、家庭裁判所は、利害関係人等の請求に基づき不在者財産管理人又は相続財産管理人を選任し、家庭裁判所の下、これらの管理人をして財産の管理等にあたらせる制度があり、これらの制度を利用することができる場合もあります。