今回は、空き家の管理業務で発生するリスクについて見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。
巡回時の施錠忘れが原因で被害が・・・管理側の責任に
3)管理事業者のリスク
ここでは、一般的な業務リスク以外の空き家管理業務固有のリスクを説明します。
① 所有者の工作物責任の賠償
空き家所有者には無過失責任の工作物責任があることから、管理事業者の善管注意義務違反が原因で所有者の工作物責任に至った場合は、所有者から損害賠償を請求される恐れがあります。したがって、管理業務の範囲やその頻度について契約に明記し、その内容を忠実に履行するとともに、問題点の有無については、遅滞なく報告(必要な改善案を含みます。)を行うことが大切です。
② 器物損壊、盗難
管理事業従事者の不注意などにより、空き家内の荷物や建物に損害を与える恐れがあります。巡回時の施錠忘れが原因で盗難があった場合、あるいは、窓の閉め忘れにより雨が吹き込み建物内部や家財に被害を与えることも考えられます。
管理の依頼者の死亡後、相続人が不明の場合は・・・
③ 近隣住民等とのトラブル
空き家管理業務は、原則として所有者の依頼を受けて行いますので、依頼内容にない管理業務や関連業務を実施することはできません。仮に近隣住民等から空き家管理に関する要望があったとしても、その要望が依頼内容に含まれていなければ、報告したり改善案を提示したりすることしかできません。
そのことによって、近隣住民等と依頼者の板挟みになるなど、近隣住民等とのトラブルに巻き込まれて営業活動に影響が及ぶなどのリスクがあります。
④ 死亡後事務
依頼者(空き家所有者)が死亡した場合、管理事業者は、原則として依頼者の死亡を知ったときに管理業務を終了します。
この時、空き家を相続する者に対して管理業務の終了を通知するとともに、費用の清算、鍵の引き渡しなど、依頼者死亡後の契約終了にかかる事務(死亡後事務)を行って契約を終了することになります。しかし、相続人がわからない場合や、確定しない場合、いない場合など、死亡後事務が円滑に実施できなくなり、管理事業者の立場が不安定な状態になるリスクがあります。
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会長
大丸ハウス株式会社 代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級建築士
大阪大学基礎工学部卒。きりう不動産信託株式会社顧問、一般社団法人全国不動産コンサルティング協会専務理事、一般社団法人全国空き家相談士協会専務理事。平成27年12月より大阪市空家等対策協議会委員。
【主な著書・寄稿等】
著書:『新・不動産信託の活用術』(住宅新報社、2008年)、『不動産の信託』(共著、住宅新報社、2005年)
寄稿:『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年)
解説・監修:『不動産コンサル過去問題集』(住宅新報社、2006年~2017年毎年)、事例提供/『居住福祉産業への挑戦』(東信堂、2013年)、『実例にみる信託の法務・税務と契約書式』(日本加除出版、2011年)など
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連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、公認ホームインスペクター、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、木材アドバイザー
司法書士事務所・不動産コンサルティング会社を経て、現在「住生活コンサルタント」として活躍。
誰もが安全・安心・健康で快適な住生活を営むことができる環境形成を目指し、不動産流通市場の透明化に関する仕組みづくりや地域の活性化、空き家問題などに精力的に取り組む。
また「第三者の立場」で消費者向け、事業者向けの講演・研修・コンサルティングで全国を飛び回る傍ら、業界紙等への執筆も行う。
現在、「新建ハウジングプラスワン」において「小さな工務店のストックビジネス最前線」を連載中。
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連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事
株式会社つばさ資産パートナーズ 代表取締役
公認不動産業務コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、CPM®(米国不動産経営管理士)、賃貸不動産経営管理士
立命館大学法学部法律学科卒。不動産相続コンサルティングを皮切りに、不動産業務、相続サポート業務を行っている。相続に強い専門家ネットワークを構築しているのも強み。
空き家解消の取組みとして一括賃料前払いサブリース方式を使い、空き家活用や空き家の買取り、デザイナーズ戸建賃貸を新築する投資事業などにも取り組んでいる。不動産オーナー向け勉強会「つばさ資産塾」を主宰。
【講演歴】クレオ大阪西(大阪市立男女共同参画センター)、大阪市立住まい情報センター、岡山リビング新聞社、ほか多数。
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一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会員
株式会社プロブレーン 代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士
「思いを築く不動産のCreative Company」をモットーとし、モノだけではなくお客様の思いにもフォーカスし不動産の困りごとを解決します。心豊かな暮らしを育むために和やかに家系学を学ぶ、「幸運を拓く 家族の法則」講座を主催。
【得意分野】①コンサルティング事業(不動産運用、賃貸経営、空き家、相続、信託、債務整理)②不動産再生事業(空き家の借上、老朽アパートの引取り、借地権付建物の引取り)③仲介事業・売買事業(土地、住宅、収益マンション、収益ビルの仲介・売買)
【寄稿】『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年)
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