今回は、国土交通省の調査結果をもとに、空き家所有者の「管理意識」などを見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。
アンケートから浮かび上がる空き家管理の実態
平成26年国土交通省の空家実態調査には、戸建空き家等の管理者へのアンケートによる空き家管理の実態や管理に関する意識調査結果が掲載されています。
●戸建て空き家等の主な管理者については、「所有者または所有者と同居している親族」が64.2%、「所有者と同居していない親族」が17.5%の順になっており、所有者やその親族が81.7%と全体の約4/5を占めている。
また、「不動産業者、建築会社、管理専門業者など」は2.0%と割合が小さい。(図表下部分の番号は、平成26年空家実態調査調査結果の概要より[以下同])
[図表1]主な管理者(n=2,140)
図表-13
●管理者がいるものについての管理の頻度は、「月に1回~数回」が34.3%と最も多い一方で、「年に1回~数回」が23.1%など、年に数回以下のものが23.8%と全体の約1/4を占めている。
[図表2]管理の頻度(総数・利用状況、n= 1,906)
図表-14
管理をする上での障害や課題を持つ所有者も多い
●管理をする上での障害・課題については、「管理の作業が大変」が26.3%、「住宅を利用する予定がないので管理が無駄になる」が23.6%、「遠方に住んでいるので管理が困難」が21.4%などとなっている一方で、「障害や課題はない」の割合が28.1%となっている。
[図表3]管理をする上での障害・課題(総数・所有者の自宅等からの距離別、複数回答、n= 2,140)
図表―16
●専門業者への管理委託については、「適当な業者がいれば委託したい」が5.2%、「既に委託している」が3.6%と、委託の意向がある割合は合わせて8.8%となっている。一方で、「委託するつもりはない」が77.2%と、全体の3/4以上となっている。
[図表4]専門業者への管理委託の希望(総数・所有者の自宅等からの距離別、n= 2,140
図表―17
これによれば、現時点では管理業者への委託の意向は極めて低く、管理業の事業環境は厳しいと言わざるを得ません。しかし、管理への障害や課題を持つ所有者は多く、今後も親族等に空き家管理を頼み続けられるとは限らないことから、適正な管理を行うことができる事業者の必要性は高まることでしょう。
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会長
大丸ハウス株式会社 代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級建築士
大阪大学基礎工学部卒。きりう不動産信託株式会社顧問、一般社団法人全国不動産コンサルティング協会専務理事、一般社団法人全国空き家相談士協会専務理事。平成27年12月より大阪市空家等対策協議会委員。
【主な著書・寄稿等】
著書:『新・不動産信託の活用術』(住宅新報社、2008年)、『不動産の信託』(共著、住宅新報社、2005年)
寄稿:『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年)
解説・監修:『不動産コンサル過去問題集』(住宅新報社、2006年~2017年毎年)、事例提供/『居住福祉産業への挑戦』(東信堂、2013年)、『実例にみる信託の法務・税務と契約書式』(日本加除出版、2011年)など
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、公認ホームインスペクター、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、木材アドバイザー
司法書士事務所・不動産コンサルティング会社を経て、現在「住生活コンサルタント」として活躍。
誰もが安全・安心・健康で快適な住生活を営むことができる環境形成を目指し、不動産流通市場の透明化に関する仕組みづくりや地域の活性化、空き家問題などに精力的に取り組む。
また「第三者の立場」で消費者向け、事業者向けの講演・研修・コンサルティングで全国を飛び回る傍ら、業界紙等への執筆も行う。
現在、「新建ハウジングプラスワン」において「小さな工務店のストックビジネス最前線」を連載中。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事
株式会社つばさ資産パートナーズ 代表取締役
公認不動産業務コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、CPM®(米国不動産経営管理士)、賃貸不動産経営管理士
立命館大学法学部法律学科卒。不動産相続コンサルティングを皮切りに、不動産業務、相続サポート業務を行っている。相続に強い専門家ネットワークを構築しているのも強み。
空き家解消の取組みとして一括賃料前払いサブリース方式を使い、空き家活用や空き家の買取り、デザイナーズ戸建賃貸を新築する投資事業などにも取り組んでいる。不動産オーナー向け勉強会「つばさ資産塾」を主宰。
【講演歴】クレオ大阪西(大阪市立男女共同参画センター)、大阪市立住まい情報センター、岡山リビング新聞社、ほか多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル
一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会員
株式会社プロブレーン 代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士
「思いを築く不動産のCreative Company」をモットーとし、モノだけではなくお客様の思いにもフォーカスし不動産の困りごとを解決します。心豊かな暮らしを育むために和やかに家系学を学ぶ、「幸運を拓く 家族の法則」講座を主催。
【得意分野】①コンサルティング事業(不動産運用、賃貸経営、空き家、相続、信託、債務整理)②不動産再生事業(空き家の借上、老朽アパートの引取り、借地権付建物の引取り)③仲介事業・売買事業(土地、住宅、収益マンション、収益ビルの仲介・売買)
【寄稿】『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年)
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル