今回は、空き家の敷地のトラブル例と対応法を見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。

環境悪化に直結するトラブルには速やかな対処を

前回に引き続き、空き家管理の建物管理について見ていきます。

 

(8)敷地内のトラブルなど

 

①ごみの投棄

 

ごみの投棄は、衛生の悪化や悪臭の発生、害虫の発生、野良猫の集中、景観の悪化など、近隣に様々な悪影響を及ぼします。したがって、空き家の敷地内に投棄されたごみを発見した場合は、速やかに依頼者の承諾を得て、投棄ごみを処分しなければなりません。

 

②犬・猫の糞尿対策

 

野良猫など動物の糞尿は、悪臭や衛生上の問題など近隣に大きな迷惑を及ぼします。それらの糞尿の処理は勿論、嫌悪剤の散布などによる予防策を依頼者に提案することが考えられます。

 

③庭の陥没や水たまり

 

庭の水たまりは、蚊などの発生の原因になります。また、庭の陥没は、敷地内の排水管の損傷や漏水など、何らかの異常があることを示しています。排水管の詰まりによって、排水会所から水が溢れることもあります。このような場合は、依頼者の承諾を得て、専門業者に調査・修理(復旧)を依頼します。

区分所有のマンションが空き家に・・・どう対応するか?

(9)分譲マンションなどの空き家

 

分譲マンションなどの区分所有建物(以下、マンションという)は、区分所有者が個別に所有して専有している専有部分と、それ以外の共同で管理している共用部分で成り立っており、この内、マンションの共用部分(外壁や屋根、構造躯体や集会室・電気室などで、区分所有者の専用使用部分を除きます。)と駐車場や通路・庭などマンションの敷地を管理組合が管理します。

 

したがって、一般的な戸建て住宅の空き家管理にみられるような、外観の観察や敷地内の清掃等は、マンションの空き家管理の対象外となり、①専有部(住戸内)、②共用部で専用使用している部分(バルコニー、ベランダ、玄関ポーチ、メーターボックス、専用庭等)、③共用部と専有部が接している部分(玄関、窓、住戸周りの外壁等)、④対象住戸の集合管理ポストなどが空き家管理の対象になります。

 

築年の古いマンションでは、標準管理規約に定める専有部分と共用部分の境界が異なっている場合もあり、厳密に言えば、空き家管理の対象なのかどうかを管理規約の規定と照らし合わせて確認しておく必要があります。

 

マンションの空き家管理の内容としては、以下のような項目を挙げることができます。

 

①専有区画内の点検

 

各室の状況確認、雨漏り、水漏れ等の漏水点検、設備機器点検、封水点検、通電・通水による設備機能の点検等

 

②専有区画内の通風・換気・清掃

 

通風・換気、各室の簡易清掃、水回りの清掃等

 

③消防設備点検や設備更新等の立ち会い

 

不定期な消防設備点検や専有区画内の設備更新工事等の立ち会い

 

④専用使用部分の点検・清掃等管理

 

バルコニー・ベランダ・専用庭・玄関ポーチなどの専用使用している共用部についての点検・清掃、バルコニーのハト対策等

 

⑤郵便物の確認と対処

 

郵便受けの配達物を確認・整理し、転送や処分

 

⑥その他

 

管理組合の掲示物などを知らせるなど

 

マンションの空き家管理業務の実施に当たっては、隣近所への挨拶に加えて、管理組合に対して空き家管理を実施することを事前に伝えておくことが大切です。

天災にはあらかじめ「備え」をしておく

(10)台風・暴風雨などへの備え

 

台風や暴風雨はいつやって来るかわかりませんので、あらかじめ備えをしておくことが大切です。

 

例えば、突風によりアンテナが倒れることにより建物を損壊させ、さらには人を傷つける恐れがあることから、空き家でアンテナを使用する必要がないなら、あらかじめ撤去しておくよう依頼者に助言します。建物に付属する日よけ・看板、鉢植え、置物、物干し竿、ごみ箱など、建物の周囲に不要なものを置かないことも必要です。

 

日頃からの建物点検に加え、雨戸や施錠の確認や、テープを貼って窓ガラスを保護したり、カーテンやブラインドを下げたりすることも台風や暴風雨への備えになります。

 

(11)天災後の報告内容

 

地震や台風などの天災後の報告事項には次のようなものがあります。

●建物の異常・変化の状態損傷、傾き、作動不良、設備異常、浸水、雨漏り、陥没等

●ごみの飛来、散乱・近隣の状況(環境変化)

 

(12)居住中の建物管理

 

国勢調査によると、2010年における全国の65歳以上の単身世帯は約479万1,000世帯で、高齢者人口の約16.4%を占めています。この単身高齢者宅は「空き家予備軍」といわれており、持ち家率の高い団塊の世代の高齢化にともなって、今後さらに増加することが見込まれます。

 

「空き家予備軍」の住宅では、居住する高齢者が建物の維持管理にまで手が回らないため、外観目視による劣化状況の把握、メンテナンスの助言・提案などを中心とした建物管理や、蛍光灯交換等の付帯サービスが求められます。

 

このように、「空き家予備軍」の建物の状況を把握し、継続的な建物管理を行ってその履歴を残すことは、空き家対策への大きな効果が期待できます。

本連載は、2017年1月15日刊行の書籍『空き家管理マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空き家管理マニュアル

空き家管理マニュアル

一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会

建築資料研究社

2016年5月26日、「空家対策等の推進に関する特別措置法」が全面施行されるなど、空き家問題を取り巻く状況が変化してきている。 不動産事業者はこの状況にどう立ち向かっていくべきか? 本書は、空き家対策の3本柱「利活用」…

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