今回は、空き家の保有にはどんな「コスト」がかかるのかを見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。

住宅用地には固定資産税の特例が適用されるが・・・

前回に引き続き、空き家を保有することのリスクを見ていきます。

 

(2)空き家を保有するためのコスト

 

空き家を保有するためには、次のようなコストがかかります。

 

税金:固定資産税・都市計画税(土地・建物)

光熱費:電気代・水道代の基本料金(通電・通水状態にある場合)

自治会費:自治会の催しに参加しない、役員をしないことのペナルティとして課せられることがあります。

損害保険:火災保険、賠償責任保険(加入できないことがあります)

管理費:自主管理のための費用(交通費など)、または管理委託費

その他:建物劣化

 

固定資産税は、土地の評価(課税標準)に一定の割合を掛けて算定しますが、居住用の建物の敷地は、本来の評価額の6分の1(200㎡まで)または3分1(200㎡超)を課税標準にするという特例があります。したがって、建物を取り壊しますと、同じ土地なのに課税標準が3倍から6倍に上がってしまい、その結果、固定資産税も同様に高くなります。

 

[図表1]住宅用地の特例率

 

例えば、固定資産税路線価が15万円の住宅地で、敷地面積が300㎡の空き家の課税標準額は、4,500万円ですが、固定資産税を1,000分の14、都市計画税を1,000分の3としますと、特例が適用できない場合の年税額は765,000円です。しかし、特例を適用しますと200,000円になり、月極め駐車場を1~2台分程度借りるくらいの金額で固定資産税等を支払うことができます。

 

[図表2]住宅用地の特例の有無による税額の違い(例)

※空き家(住宅)の多くは、住宅用地の特例を受けています。
(土地面積が200㎡以下の場合は、基本的に5.1倍になります)
※空き家(住宅)の多くは、住宅用地の特例を受けています。 (土地面積が200㎡以下の場合は、基本的に5.1倍になります)

 

空き家を保有するコストは低く、一見得をするような気がしますが、空き家保有のリスクを考慮し、Ⓐ放置したまま保有、Ⓑ適正な管理、Ⓒ利活用、Ⓓ建物の除却、Ⓔ売却処分などから総合的に判断することを、空き家所有者に説明する必要があります。

 

なお、平成27年度の税制改正によって、「空家等対策特別措置法」の規定に基づいて、市町村長が特定空家等の所有者等に対して周辺の生活の保全を図るため必要な措置をとることを『勧告』した場合は、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外することになりました。

 

[図表]平成27 年度税制改正資料(国土交通省住宅局)

 

本連載は、2017年1月15日刊行の書籍『空き家管理マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空き家管理マニュアル

空き家管理マニュアル

一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会

建築資料研究社

2016年5月26日、「空家対策等の推進に関する特別措置法」が全面施行されるなど、空き家問題を取り巻く状況が変化してきている。 不動産事業者はこの状況にどう立ち向かっていくべきか? 本書は、空き家対策の3本柱「利活用」…

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