鍵の保管、建物の状態・・・空き家を預かる際の留意点

今回は、空き家を預かる際の留意点を見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。

建物の鍵を預かる場合は、制限を設ける

前回に引き続き、空き家・建物のチェックポイント、関連サービス、保険など、空き家管理固有のポイントを見ていきます。

 

②空き家の鍵の預かり

 

建物内部の点検を含まない空き家管理では、基本的に建物の鍵は預からないようにします。ただし、依頼者の希望で建物の鍵を預かる場合は、「使用は非常時に限る。」「非常時以外の建物内ヘの立ち入りは、その都度依頼者の指示を受けて行う。」などの制限を設けることが必要です。

 

建物の鍵を預かる場合、管理事業者が民法717条の「土地の工作物の占有者・所有者の責任(工作物責任)」を負うリスクをなくすために、占有を管理事業者に移転するものではないことを明らかにしておきます。ただし、そのことをもって、第三者からの占有の主張に対抗できるわけではありません。一般に、不動産業者が売主から建物の鍵を預かる場合、物件調査や内覧に立ち会うだけの権限しかなく、工作物責任には当たらないと考えられていますが、空き家管理で鍵を預かる場合とは、その責任の重さが異なることに注意しておきましょう。

 

また、管理事業者は、鍵(門扉や駐車スペースなど建物以外の鍵を含みます。)を空き家管理業務以外の目的で使用しないことを明確にし、預かった鍵は、鍵の種類ごとに本数を記録(本鍵、コピー鍵別)しておきます。管理期間中は、鍵の持ち出しを記録するなど、厳重に鍵を取り扱うようにします。なお、鍵を外注業者などに預けたことに起因するトラブルは、原則としてその責任が管理事業者に帰属します。

 

※老朽住宅などでは、施錠・解錠やドアの開閉に支障が生じているケースがあります。そのような場合は、空き家管理の開始前に、建物の鍵の修理・交換やドアの建付け修理などが必要です。

管理不全状態を解消した上で、管理を受託する

③建物の状態

 

建物が、空家等対策特別措置法で定義されている特定空家等の状態(ここでは、「管理不全状態」といいます。)になっていないかを確認します。依頼時に管理不全状態である場合は、その状態を解消した上で管理を受託します。また、そのまま放置すると管理不全状態になるような建物の場合も、未然防止策を施す必要があります。

 

なお、管理不全状態を解消して管理できる状態にするための費用が高額になるなど、空き家管理を行っていくことが合理性に欠けると判断される場合、そのまま放置することの諸問題やリスクなどを依頼者に説明するとともに、公費による除却助成があればその旨を助言するなど、管理不全状態の解消に向けた対応をすることが必要です。

 

注)空家等対策特別措置法では、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)を「空家等」(第2条第1項)、次に掲げるような状態にあると認められる「空家等」を「特定空家等」(同条第2項)と定義しています。

 

・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

・衛生上有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

火災保険、地震保険、賠償責任保険の加入状況を確認

④保険の加入状況

 

損害保険の加入状況を確認します。

 

ⅰ)火災保険・地震保険

対象になる空き家に火災保険が掛けられていない場合は、加入を勧めます。

 

居住用の建物は「住宅物件」として住宅火災保険(保険会社により各種商品があります。)の対象ですが、住居として使用される見込みのない空き家住宅は、通常「一般物件」として取り扱われ、店舗併用住宅と同様に普通火災保険の対象になります。普通火災保険の保険料は、住宅火災保険の保険料と比較しますと約2倍に高くなっています。

 

火災保険を契約する場合、申込人は必ずしも空き家所有者でなくてもよく、推定相続人(現状のままで相続が開始した場合、直ちに相続人になるべき者)等の利害関係人であれば契約できます。しかし、火災等による損害が発生した場合、事故発生後の処理が困難になることがあるので注意しておく必要があります。なお、空き家の状態などによっては火災保険の引き受けが断られる場合があります。

 

地震保険は、住宅のみに使用される建物及び居住併用建物と、そこに収容される家財だけを対象にしています。したがって、空き家の火災保険が「一般物件」の場合は、地震保険に加入できません。

 

火災保険に加入している場合、その保険証券を確認すれば次の事項が把握できます。

 

・保険会社

・証券番号

・保険期間

・保険の種類

・契約者住所

・氏名

・記入被保険者名

・保険金額

・契約目的物件

・保険の対象(建物・家財)

・賠償責任に関する特約の有無

・地震保険の有無

・その他

 

住居として使用していた建物が空き家になった場合、使用形態の変更により火災保険契約の対象が「住宅物件」でなくなることがあります。

 

ⅱ)建物所有者の賠償責任保険

空き家が近隣の居住者や通行人等の第三者に及ぼした損害に対する賠償は、空き家所有者の契約による「施設所有(管理)者賠償責任保険」で対応することになります。

 

この保険は、施設を所有、使用または管理する者が、施設の構造上の欠陥や管理の不備、あるいは施設の用法にともなう仕事の遂行に起因して、第三者に身体的傷害や財物損壊を与えた場合に、法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を保険金として支払うものです。この法律上の賠償責任には、所有者の賠償責任が含まれますので、空き家所有者にとっては加入しておくべき保険ですが、空き家や老朽化した建物の場合には、保険会社に引き受けを断られる場合があります。

 

このように、空き家所有者は、必要な損害保険に加入できない可能性があり、その場合大きなリスクを抱え込むことになります。

(注)住宅火災保険や併用住宅を対象とする普通火災保険には、建物所有者の賠償責任保険を特約に付加した保険商品もあります。

(注)空き家の管理業者の賠償責任保険で、所有者の賠償責任を補償する商品が誕生しています。

(注)保険会社によって取り扱う保険商品の内容が異なりますので、詳しくは保険会社や代理店に確認して下さい。

一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会長
大丸ハウス株式会社 代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級建築士
 

大阪大学基礎工学部卒。きりう不動産信託株式会社顧問、一般社団法人全国不動産コンサルティング協会専務理事、一般社団法人全国空き家相談士協会専務理事。平成27年12月より大阪市空家等対策協議会委員。
【主な著書・寄稿等】
著書:『新・不動産信託の活用術』(住宅新報社、2008年)、『不動産の信託』(共著、住宅新報社、2005年) 
寄稿:『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年) 
解説・監修:『不動産コンサル過去問題集』(住宅新報社、2006年~2017年毎年)、事例提供/『居住福祉産業への挑戦』(東信堂、2013年)、『実例にみる信託の法務・税務と契約書式』(日本加除出版、2011年)など

著者紹介

一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、公認ホームインスペクター、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、木材アドバイザー 

司法書士事務所・不動産コンサルティング会社を経て、現在「住生活コンサルタント」として活躍。
誰もが安全・安心・健康で快適な住生活を営むことができる環境形成を目指し、不動産流通市場の透明化に関する仕組みづくりや地域の活性化、空き家問題などに精力的に取り組む。
また「第三者の立場」で消費者向け、事業者向けの講演・研修・コンサルティングで全国を飛び回る傍ら、業界紙等への執筆も行う。
現在、「新建ハウジングプラスワン」において「小さな工務店のストックビジネス最前線」を連載中。

著者紹介

一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 理事
株式会社つばさ資産パートナーズ 代表取締役

公認不動産業務コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、CPM®(米国不動産経営管理士)、賃貸不動産経営管理士 

立命館大学法学部法律学科卒。不動産相続コンサルティングを皮切りに、不動産業務、相続サポート業務を行っている。相続に強い専門家ネットワークを構築しているのも強み。
空き家解消の取組みとして一括賃料前払いサブリース方式を使い、空き家活用や空き家の買取り、デザイナーズ戸建賃貸を新築する投資事業などにも取り組んでいる。不動産オーナー向け勉強会「つばさ資産塾」を主宰。
【講演歴】クレオ大阪西(大阪市立男女共同参画センター)、大阪市立住まい情報センター、岡山リビング新聞社、ほか多数。

著者紹介

一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会 会員
株式会社プロブレーン 代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士 

「思いを築く不動産のCreative Company」をモットーとし、モノだけではなくお客様の思いにもフォーカスし不動産の困りごとを解決します。心豊かな暮らしを育むために和やかに家系学を学ぶ、「幸運を拓く 家族の法則」講座を主催。
【得意分野】①コンサルティング事業(不動産運用、賃貸経営、空き家、相続、信託、債務整理)②不動産再生事業(空き家の借上、老朽アパートの引取り、借地権付建物の引取り)③仲介事業・売買事業(土地、住宅、収益マンション、収益ビルの仲介・売買)
【寄稿】『地代・家賃と借地借家』(住宅新報社、2014年)、『事例でわかる!コンサルティングによる不動産ビジネス』(週刊住宅新聞社、2012年)

著者紹介

連載空き家820万戸時代が到来――空き家を持つ人のための管理マニュアル

本連載は、2017年1月15日刊行の書籍『空き家管理マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

空き家管理マニュアル

空き家管理マニュアル

一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会

建築資料研究社

2016年5月26日、「空家対策等の推進に関する特別措置法」が全面施行されるなど、空き家問題を取り巻く状況が変化してきている。 不動産事業者はこの状況にどう立ち向かっていくべきか? 本書は、空き家対策の3本柱「利活用」…

 

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