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「すべての卵を一つのカゴに盛るな」とは言うが・・・
分散投資の大切さを表すものとして「すべての卵を一つのカゴに盛るな」(「 Don’t put all your eggs in one basket」)という格言があります。すべての卵を一つのカゴに入れておくと、落としたときにすべて割れてしまいます。ここから、株や投資信託などの特定の資産に集中して投資することは、リスクが高いという教訓を示しています。
この格言は、分散投資を説明する際に良く使われますが、どのような投資であれば「一つのカゴ」に盛らないことになるか、については留意が必要です。以下に、分散投資の手法について具体的に見ていきながら、その点について説明します。
例として、今から10年前の2007年3月に、TOPIX(東証株価指数)に連動した商品に投資をしたとします。TOPIXとは、東証1部に上場している全銘柄の時価総額を全銘柄数で割った数字で、日本株式市場の代表的な指数(インデックス)です。
分かりやすくするために、投資を開始した時点(2007年3月)のTOPIXの指数を100として、その後の動きを見てみます。リーマンショックで市場が揺れた2009年初めには、50前後に下落し、その後も、東北の震災や円高などの影響を受けて、2012年までは50前後で推移しました。2013年以降は、アベノミクスや日銀の金融緩和などによって上昇をし、現在では100まで戻しています。
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ここで、TOPIXに連動する商品に投資をしている投資家が、分散を図る目的で他の商品にも投資することを考えたとします。そして、その投資対象としてS&P500指数に連動した商品に投資をすることにします。S&P500指数とは米国の株式市場の動向を表す代表的な株価指数です。
では、このS&P500指数は同時期にどのような動きをしていたでしょうか。同じく投資を開始した時点の2007年3月の指数を100とします。TOPIXと同様に、リーマンショックの影響を受けて、2009年初めには50前後に下落しています。その後は今日まで上昇し、160になっています。
TOPIXとS&P500では、東北の震災や為替の円高などの日本独自の要因によって、2010年から2012年中頃にかけては、少し違った動きになっていますが、この期間以外では同じトレンドを示している点に注意が必要です。
日本株式と逆相関の傾向を示す「金」
それでは、S&P500に代わって、金に投資をするとしたら、どうでしょうか。同じく金(現物1ozあたり)の指数の動きを見てみます。
2007年3月に投資開始した時点の指数を100とします。そこから2012年までは、上昇基調を続け、250を超えたところを推移していました。その後、下落に転じて2016年の終わりには、150になっています。
S&P500と異なり、TOPIXと金の指数では、動きのトレンドが逆になっています。2007年から2012年中頃まで、TOPIXが下落した時期に金は上昇し、それ以降、TOPIXが上昇する局面で金は下落傾向を示しています。
ここから分かることは、TOPIX指数への投資とのセットには、S&P500指数への投資よりも、金の指数への投資の方が、分散の効果をより引き出せるということです。
一見、分散して投資していると思っても、上記の例のように、日本株と米国株の組み合わせでは、結局、同じカゴに盛っていることになり、適切なリスク分散が出来ていません。
このように一言で分散投資と言っても、分散する対象は何かを整理する必要があります。次回はこの点について、さらに掘り下げて説明します。
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