ここまでの連載では、なぜ日本の投資信託では利益を出しにくいのか、具体的な事例を交えながら解説してきました。これからの連載後半では、お勧めしたい運用手法を具体的に紹介していきます。今回は、そのための前提として、日米英における家計金融資産の構成比の違いについて検証をし、家計金融資産の日本での現状を確認しておきます。

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米英と比較して、現預金に偏っている家計金融資産

日本の家計金融資産は、1,700兆円を超えています。その中でも、現預金の割合は安定的に増加しており、額にして約900兆になっています。下記の図表1と2で、日米英3カ国の家計金融資産の構成比を見てみましょう。

 

【図表1 各国の家計金融資産構成比】

(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」
(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」

【図表2 各国の株式・投信等投資比率】

(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」
(注)年金・保険等を通じた間接的な保有を含む。
(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」

ここから分かることは、日本の家計金融資産は、米英に比べて、現預金の比率が高く、株式・投信の比率が低いということです。株式・投信の保有比率は、間接的な保有も含めても英国の半分程度に留まっています。この構成比の差が、下記の図表3のように、家計金融資産の推移にも影響しています。

 

 

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【図表3 各国の家計金融資産の推移】

(注)95年=1として指数化。
(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」
(注)95年=1として指数化。
(出所)金融庁「平成27年度 金融レポート」

米英では、1995年を起算年にして、家計金融資産額が20年間で約3倍になっているのに対し、日本は1.5倍程度に留まっています。

 

その理由は、日本では株式・投信の保有比率が低いために、米英に比べて運用リターンを得られていないということ、つまり、低金利の預貯金に多くの資金が滞留し続けたことが考えられます。

 

NISAやiDeCoに期待される、若い世代の投資活性化

次に、なぜ日本では家計金融資産における現預金のウエイトが高いのか、言い換えれば日本で「貯蓄から投資」がなかなか進まない理由は何なのかを考えてみましょう。

 

一般的によく言われるのは、以下の3つの理由です。

 

①日本人は、まじめに仕事をして収入を得ることを尊ぶ傾向がある。つまり投資による収入というものが軽んじられてきた。

 

②日本においては、投資(主に株式投資)における成功体験が少ない。バブルとその後の不景気を経験し、「投資=投機」という固定観念が根強くある。

 

③日本では、金融資産の8割を50歳代以上のシニア世代が保有している。この世代では、退職金や相続財産、保険の満期金の受け取りなどによって、金融資産が一気に増えることが多いが、老後のことを考えると、「増やす」よりも「減らさない」ことが優先されて、投資を控えがちになる。一方、30~40代の若い世代では、勤労所得の多くを住宅ローンの返済や教育資金に充てているために、投資に回せる資金が限られてしまっている。

 

上記の3つについて、もう少し詳細に検討してみます。

 

①のような投資に対する意識の違いは、日本と米英で行われる「投資教育」の違いによって生じるものだと考えられます。たとえば米国では幼いころから、家庭や学校で積極的に投資教育がなされると言います。その結果、米国では投資は投資相手(企業や国など)を援助する行為であり、その対価として利益を享受することは一般的なことであると捉えられています。

 

②に関しては、日本では分散投資や長期投資といった投資手法が普及せず、投資対象も日本株式に偏った結果と言えるでしょう。

 

③に関しては、かつて米国も、日本と同じ程度の株式・投信保有比率に留まっていましたが、401k(企業型確定拠出年金)やIRA(個人向け確定拠出年金)などの税優遇処置を含んだ政策を打ち出し、少額からの投資や投資積立、長期投資を可能にして、株式・投信保有比率を高めたという経緯があります。日本でも、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の普及とともに、20代、30代による投資が活発化されることが期待できるでしょう。

 

ここまで、日本と米英での家計金融資産の構成比や投資に関する意識の違いなどを見てきました。日本における「資産形成」に対する意識は、両国に比べると、かなり遅れていると感じます。次回からは、このような現状を踏まえて、日本でお勧めできる運用手法を紹介したいと思います。

 

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本連載は、一般的な投資信託の仕組みなどを紹介することを目的にしています。投資を促したり、筆者が所属する「幻冬舎アセットマネジメント」に勧誘することを目的としたものではありません。また、投資にはリスクがあります。リスクに十分に考慮をして、投資判断を行ってください。本連載の内容に関して投資した結果につきましては、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

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