(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいを考えるとき、持ち家があれば安心だと考える人は少なくありません。一方、賃貸住宅に長く住み続け、住宅購入にかかる費用を貯蓄や資産運用に回してきた人もいます。家賃の安い住宅で暮らし、車を持たずに生活することで、どれほど家計に違いが生まれるのでしょうか。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「ここがいい」70歳男性が団地を離れない理由

正彦さんの年金収入は月約17万円。税金や社会保険料を差し引いた手取りは月15万円ほどです。

 

毎月の支出は家賃を含めて約13万円。食費は自炊を中心に月3万円程度に抑えていますが、外食を我慢しているわけではありません。

 

「食べたいものがあれば食べますし、年に何回か旅行にも行きます。普段の生活にお金がかからないので、そういうときには気兼ねなく使えます」

 

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円で、約3万円の不足となっています。

 

正彦さんは平均より年金収入が多く、住居費や交通費も抑えられているため、日常の支出はおおむね年金の範囲内に収まっています。

 

ただ、団地暮らしにも気になることはあります。

 

建物にはエレベーターがなく、正彦さんの部屋は3階。今は階段の上り下りに支障はありませんが、年齢を重ねたときのことは考えるようになりました。

 

「重い買い物袋を持って上がると、昔より疲れるようになりましたね。あと10年もしたら、どうなるかわかりません」

 

数年前には、同じ棟に住んでいた知人が足を悪くし、エレベーターのある住宅へ転居しました。その出来事も、正彦さんが将来の住まいを考えるきっかけになったそうです。

 

それでも、今すぐ引っ越すつもりはありません。

 

「近所には顔見知りもいますし、どこに何があるか全部わかっています。70歳になって知らない土地で一から生活するより、今のほうが気楽なんです」

 

金融資産6,000万円についても、使わずに残すことが目的ではないと話します。

 

「今後、介護が必要になったらサービス付き高齢者向け住宅や老人ホームに入ることも考えています。そのときに、お金があることで選択肢を持てるのは安心ですね」

 

正彦さんは、体力に不安を感じるようになったら、エレベーター付きの賃貸住宅への住み替えも検討するつもりです。

 

「今はここで十分満足しています。無理に生活を変える必要はないと思うんです」

 

住宅購入には資産を形成できる利点がある一方、賃貸住宅でも住居費を抑えながら資産を蓄えることは可能です。老後の住まいを選ぶ際には、住宅の所有形態や資産額だけでなく、日々の暮らしやすさや将来の身体状況に合わせて住み替えられるかどうかも考えておきたいところです。

 

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