「毎月4万円の赤字」妻が切り出した住み替えの相談
73歳の信夫さん(仮名)は、71歳の妻・洋子さん(仮名)と東京都内の賃貸マンションで暮らしています。
夫婦の年金収入は合計月約22万円。信夫さんは会社員として長く働き、洋子さんもパート勤務を続けていました。
現在の住まいは、約20年前から暮らしている2LDKのマンションです。家賃は管理費込みで月10万5,000円。駅やスーパー、病院が近く、生活には便利な場所でした。
「子どもたちが独立してからも、ここが気に入っていたので引っ越そうとは思わなかったんです」
しかし信夫さんが仕事を辞め、夫婦ともに年金生活になってから、家計の状況が変わりました。
年金22万円から税金や社会保険料を差し引いた手取りは、月約20万円。一方、家賃のほか、食費や光熱費、通信費、医療費などを合わせた支出は月約24万円に上ります。
不足する約4万円は、毎月貯蓄から補っていました。
「最初は、退職後だから多少の赤字は仕方ないと思っていました。でも、気づけば貯金が少しずつ減っていて……」
夫婦の貯蓄は現在約800万円。年間48万円の赤字が続けば、10年間で約480万円を取り崩す計算です。さらに、今後は医療費や介護費用が増える可能性もあります。
ある日、洋子さんが家計簿を見ながら、信夫さんにこう話しました。
「この家賃では、あと10年も暮らせません。私たち、80歳を過ぎてから引っ越すのはもっと大変になると思うの」
信夫さんも、妻の言葉が気になりました。
実は以前から、もう少し家賃の安い物件を探していたそうです。しかし、希望する地域では家賃が高く、安い物件は駅から遠かったり、階段しかなかったりと、なかなか条件が合いません。
「年を取ってから住むなら、家賃だけでなく、病院や買い物に行きやすいことも大事ですから」
そんなとき、洋子さんが区役所で見かけたのが、都営住宅の入居者募集に関する案内でした。
「都営住宅なら、今より家賃を抑えられるかもしれないね」
ただ、信夫さんは乗り気ではありませんでした。
「都営住宅なんて、応募する人が多くて当たらないんじゃないか。それに、古い団地ばかりだろう」
それでも洋子さんは、募集情報を調べてみることにしました。
すると、都営住宅には比較的新しい建物もあり、過去の応募倍率も住宅によって異なることがわかったのです。
