「家を買う必要がなかった」40年間の団地暮らしで築いた資産
首都圏郊外のUR賃貸住宅に住む正彦さん(70歳・仮名)。独身で、40年前から同じ団地の一室で暮らしています。
現在の家賃は月4万8,000円。築50年を超える建物ですが、室内は必要に応じて修繕され、日常生活に大きな不便はないといいます。
「古い団地ですけど、駅まで歩いて10分くらいですし、スーパーも病院も近いんです。私には十分ですよ」
正彦さんがこの団地に入居したのは30歳の頃。当時は都内の会社に勤めており、通勤しやすく、家賃も手頃だったことから選びました。
その後、同僚たちが次々と住宅を購入していくなかでも、正彦さんは引っ越しを考えなかったそうです。
「同僚からは『いつまで賃貸に住むんだ』なんて言われましたね。でも、一人で暮らすのに広い家はいらないし、ここなら通勤にも困らなかったので」
もう一つ、正彦さんが若い頃から続けてきたのが、車を持たない生活です。
通勤には電車を利用し、買い物も徒歩か自転車。休日に遠出するときは公共交通機関を使っていました。
「車があれば便利でしょうけど、駐車場代や保険料もかかりますよね。必要なときだけレンタカーを借りれば十分でした」
正彦さんは大手企業で65歳まで働き、退職時には約2,000万円の退職金を受け取りました。
現在の金融資産は約6,000万円。そのうち約4,000万円は現役時代からの貯蓄と長期投資によって形成したものです。
若い頃から毎月一定額を積み立て、40代以降は投資信託なども活用してきました。運用が順調だった時期もありましたが、大きく値下がりした経験もあるといいます。
「特別に給料が高かったわけではありません。ただ、住宅ローンも車の維持費もなかったので、毎月ある程度のお金を残せたんです」
もちろん、家賃は入居当時から変わっていません、というわけではありません。これまでに家賃の改定もありましたが、住み慣れた地域で比較的低い住居費を維持できたことが、資産形成を支えました。
退職後、友人からは「それだけ貯金があるなら、もっといいマンションに引っ越せばいいのに」と言われることもあるそうです。それでも正彦さんには、今の住まいを離れる理由が見つからないといいます。
