「兄貴のところには300万円も?」集まりで発覚した援助の差
72歳の敏夫さん(仮名)は、同い年の妻・和子さん(仮名)と郊外の一戸建てで暮らしています。
夫婦の年金収入は月約24万円。住宅ローンは完済しており、貯蓄は約2,500万円あります。
2人の息子はすでに独立し、長男の直樹さん(46歳・仮名)には大学2年生の娘、次男の裕介さん(43歳・仮名)には大学1年生の息子がいます。
兄弟はそれぞれ家庭を持ち、年末年始やお盆には家族そろって実家に顔を出していました。
変化が起きたのは、2年前のことです。
直樹さんの娘が県外の私立大学に合格した際、直樹さんから敏夫さんに相談がありました。
「大学には行かせたいんだけど、下の子の教育費もあるし、正直かなり厳しくて」
直樹さん夫婦は共働きでしたが、住宅ローンの返済も続いており、娘の一人暮らしにかかる費用が想定以上だったといいます。
敏夫さんは、孫の進学を喜ぶ一方、息子夫婦の負担が気になりました。
「大学を諦めるようなことになったらかわいそうだろう。うちにも多少の蓄えはあるし、できる範囲で助けてやろうと思ったんです」
夫婦で話し合い、大学4年間の学費の一部として、合計300万円を援助することにしました。
ただし、300万円を一度に渡したわけではありません。大学から届く納付書を確認し、必要な時期に授業料などを負担する形を取っています。
一方、翌年、裕介さんの息子も私立大学へ進学しました。
裕介さん夫婦も共働きで、進学費用はそれまでの貯蓄から工面していました。敏夫さん夫婦は、入学祝いとして30万円を渡したといいます。
「次男のところは、学費に困っているという話もありませんでした。だから、特別な援助は必要ないと思っていたんです」
敏夫さん夫婦にとって、長男への援助は経済的な事情を考慮した特別な支援でしたが、その事情を次男には詳しく説明していませんでした。
ある年の正月、家族が集まった際、大学生の孫が何気なく口にしました。
「おじいちゃんたちが学費を出してくれて、本当に助かったよ」
その言葉を聞いた裕介さんは、初めて援助の内容を知ったそうです。
後日、裕介さんから敏夫さんに電話がありました。
「兄貴のところに300万円も出していたの? うちの子には30万円だったのに」
敏夫さんが事情を説明すると、裕介さんはこう続けました。
「うちだって大学の学費は大変だったよ。でも、親に頼らず何とかしようと思っていたんだ」
敏夫さんは、息子がそこまで不満を抱くとは思っていませんでした。
