(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもや孫の進学を機に、祖父母が学費を援助する家庭もあります。将来のために役立ててほしいという思いから、まとまった金額を渡す人もいるでしょう。ただ、年金生活に入ってからの大きな支出には慎重な判断が必要です。支援する側と受ける側で期待が食い違い、思わぬすれ違いにつながることもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「貯金はまだあるんでしょう?」娘のひと言に傷ついた71歳母

孫が大学へ入学して半年ほどたった頃、佳奈さんから再び連絡がありました。

 

「来年からの学費のことなんだけど、少し相談してもいい?」

 

千鶴さんは、嫌な予感がしたといいます。

 

話を聞くと、佳奈さん夫婦は奨学金の利用も検討しているものの、できれば借入額を抑えたいと考えていました。

 

「お母さんにまた少し助けてもらえたら、本人の負担も減ると思って」

 

千鶴さんは、最初に援助した際の約束を思い出しました。

 

「これが最後だって言ったでしょう。私は、もう学費を出すつもりはないわよ」

 

すると佳奈さんは、困ったように答えました。

 

「でも、貯金はまだあるんでしょう? 全部出してほしいと言っているわけじゃないのに」

 

その言葉に、千鶴さんはショックを受けました。

 

「娘に悪気はなかったのかもしれません。でも、私の貯金を、まだ使えるお金だと思われているようで悲しかったんです」

 

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円。平均では毎月約3万円の不足が生じています。

 

また、祖父母による教育費の援助には税制上の注意点もあります。扶養義務者が教育費として必要な都度、通常必要と認められる範囲で直接支払う場合は、原則として贈与税の対象になりません。一方、将来の学費としてまとまった現金を渡し、預貯金として残る場合などは、課税関係を確認する必要があります。

 

千鶴さんが今回、大学へ直接振り込む方法を選んだのも、援助する目的と金額を明確にしたかったからでした。

 

佳奈さんとの電話を終えた後、千鶴さんはしばらく自分から連絡を取らなかったといいます。

 

数週間後、佳奈さんから謝罪の電話がありました。

 

「お母さんのお金なのに、私たちの都合ばかり考えていた。ごめんね」

 

佳奈さん夫婦は家計を見直し、今後の学費については奨学金や教育ローンも含めて、自分たちで準備することにしたそうです。

 

千鶴さんも、娘の謝罪を受け入れました。ただ、以前のように何でも相談し合う関係に戻ったわけではありません。

 

「お金の話になると、少し身構えるようになりました。孫のことは今でもかわいいですし、応援したい気持ちも変わりません。でも、援助には限度があることを、家族にも理解してほしいんです」

 

現在、千鶴さんは孫の誕生日や帰省の際に、無理のない範囲で贈り物をしています。学費については、これ以上の援助をしない方針です。

 

子どもや孫への経済的な援助は、家族の将来を支える一方、援助を受ける側に新たな期待を生むこともあります。特に年金生活では、今後の医療費や介護費用などを見据えた資金管理が欠かせません。援助する金額や回数について事前に家族で認識をそろえ、無理のない範囲を守ることが、良好な関係を保つうえでも重要になります。

 

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