(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が「暮らしには困っていない」と話していても、実際の家計まで把握している子どもは多くありません。年金の額や持ち家の有無だけでは、日々の支払いに余裕があるかは判断しにくいものです。物価の上昇や住宅設備の故障が重なると、わずかな不足が積み重なることもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「少し足りないだけ」の積み重ね…娘が知った母の家計

翌週、由紀さんは母と一緒に家計を確認しました。

 

澄江さんの毎月の支出は、食費約4万円、光熱費約2万円、通信費や日用品などで約2万円、医療費や交通費などで約2万円。合わせて10万円程度です。

 

年金12万円で日常生活は賄えていましたが、固定資産税や火災保険料、住宅設備の修理費といった臨時支出までは十分に見込んでいませんでした。

 

以前は貯蓄から支払っていたものの、残高は約24万円まで減っていました。

 

「去年、屋根の補修に40万円ほどかかったんです。それから、何かあるたびに貯金が減って……」

 

澄江さんは、残高が少なくなるのが怖くなり、支払いを先延ばしにしていたといいます。

 

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月平均の可処分所得が11万8,465円、消費支出が14万8,445円で、約3万円の不足が生じています。

 

由紀さんが心配したのは、未払い額だけではありません。

 

「母は『次の年金で払う』と言っていましたが、年金が入っても、また次の生活費が必要になります。これでは同じことを繰り返してしまいます」

 

日本の老齢年金は原則として偶数月に前2ヵ月分が支払われます。澄江さんの場合、通常は2ヵ月分の約24万円が振り込まれますが、それをすべて未払いの解消に充てるわけにはいきません。

 

由紀さんは母と相談し、まず各請求先に連絡して未払い額と支払期限を確認しました。固定資産税については自治体の窓口で納付相談を行い、修理業者にも支払い方法を相談することにしました。

 

そのうえで、当面の不足分は由紀さんが一時的に援助し、今後は母の年金から住宅維持費として毎月1万円を別に確保することにしました。

 

「援助するのは構わないけれど、何も知らないまま滞納が増えるほうが心配だよ」

 

そう伝えると、澄江さんは「隠していたつもりはなかったけれど、言い出せなかった」と打ち明けました。

 

現在、由紀さんは母の了承を得て、月に一度、請求書や通帳の記録を一緒に確認しています。

 

「母にはできるだけ自分の生活を続けてほしいです。ただ、お金のことはもう少し早く相談してほしかったですね」

 

年金収入があっても、住宅の維持費や医療費などが重なれば、家計に余裕がなくなることがあります。特に一人暮らしの高齢者は、支払いの悩みを家族に打ち明けず、抱え込んでしまう場合もあります。日頃から生活費や臨時支出について話せる関係を築いておくことが、深刻な滞納を防ぐための備えとなります。

 

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