「辞めたくても辞められない」娘が知った父の家計
邦夫さんによると、退職時には1,000万円以上の預貯金がありました。
しかし、妻の闘病中には通院や生活の支援にお金がかかり、亡くなったあとも自宅の修繕や車の買い替えなどで、少しずつ取り崩してきたそうです。
「大きな買い物をしたつもりはないんだけどな。気づいたら、ここまで減っていたんだ」
現在の生活費は月13万〜14万円ほど。年金だけでは足りず、アルバイト代で不足分を補っています。
「仕事を辞めたら、毎月貯金を崩さないといけない。それが怖いんだよ」
真理さんは、父が仕事を続ける理由をようやく理解しました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月平均の可処分所得が11万8,465円、消費支出が14万8,445円で、約3万円の不足が生じています。年金を中心とした生活では、貯蓄の取り崩しが必要になる世帯もあります。
また、内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、2025年の75歳以上の就業率は12.6%。高齢期にも働く人がいる一方、仕事を続ける理由や経済状況は人によって異なります。
「仕事が楽しいから働いているんだと思っていたのに……」
真理さんがそう言うと、邦夫さんは苦笑いしました。
「楽しいのも本当だよ。職場の人と話すのも好きだし。ただ、今は収入がなくなると困るんだ」
真理さんは、父がこれまで一度もお金の相談をしてこなかった理由を尋ねました。
「お前たちにも生活があるからな。自分のことは自分で何とかしたかったんだよ」
それでも、79歳という年齢を考えると、今の仕事をいつまで続けられるかはわかりません。
真理さんは、父と一緒に毎月の支出を確認することにしました。
車の維持費や保険料、通信費などを見直し、今後は車を手放すことも検討しています。自宅はスーパーまで徒歩15分ほどの場所にあり、買い物の方法を工夫すれば、車がなくても生活できそうです。
また、自治体の高齢者向けサービスについても調べ始めました。
「父が働きたいなら、無理に辞めさせるつもりはありません。でも、働けなくなったときのことは、今から考えておかないといけませんよね」
邦夫さんも、娘に家計の状況を話したことで、少し気持ちが軽くなったようです。
「ずっと一人で考えていたからな。相談できてよかったよ」
高齢になっても働き続けることには、収入の確保や社会とのつながりなど、さまざまな意味があります。ただ、仕事を辞めると生活が成り立たなくなる場合には、早めに家計を見直し、利用できる支援を確認しておく必要があります。親が元気に働いているうちに、将来の暮らしについて家族で話し合うことも大切でしょう。
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