「元気でいられるから」79歳父が続ける週3日のアルバイト
「まだ働けるから大丈夫。家にいるより、体を動かしていたほうがいいんだよ」
79歳の父・邦夫さん(仮名)は、娘の真理さん(54歳・仮名)にいつもそう話していました。
邦夫さんは5年前に妻を亡くし、現在は一人暮らし。月約11万円の年金を受け取りながら、近所の施設で清掃のアルバイトをしています。
勤務は週3日、午前中の4時間ほど。月収は約6万円です。
「父は昔から働くことが好きでした。定年後も何かしら仕事をしていたので、79歳になっても働いていることを不思議には思わなかったんです」
真理さんは車で30分ほどの場所に住んでおり、月に2回ほど実家を訪れていました。
邦夫さんは住宅ローンを完済した一戸建てで暮らし、食事も掃除も自分でこなしています。ただ、最近は仕事から帰ったあと、疲れて昼寝をすることが増えていました。
「もう十分働いたんだから、少し休んだら?」
真理さんがそう言っても、邦夫さんは笑って首を振ります。
「週3日くらい、何ともないよ。仕事を辞めたら、張り合いがなくなるだろう」
真理さんは、それ以上強く勧めることはありませんでした。
そんなある日、実家を訪ねると、邦夫さんが台所で古い冷蔵庫を調べていました。
「どうしたの? 壊れた?」
「冷えが悪くなってきたんだ。でも、まだ使えるから」
冷蔵庫は20年以上使っているもので、以前から異音もしていたそうです。真理さんが買い替えを勧めると、邦夫さんは「今は余計なお金を使いたくない」と答えました。
「冷蔵庫は必要なものでしょう。そんなに節約しなくてもいいんじゃない?」
すると、邦夫さんは少し黙ってから言いました。
「実は、あまり貯金が残っていないんだ」
真理さんは驚きました。
父は長年会社員として働き、退職金も受け取っています。母親が亡くなったあとも、生活に困っている様子はありませんでした。
「どのくらい残っているの?」
邦夫さんは通帳を持ってきて、娘に見せました。記載されていた残高は、約85万円でした。
「これだけなの?」
「別の口座に30万円ほどあるけど、それで全部だよ」
預金は合わせて約115万円。真理さんが想像していたより、ずっと少ない金額でした。
