「お金がないと言っていたのに」亡き母が残した4,000万円
「兄からの電話で初めて知りました。母にそんなに貯金があったなんて、想像もしていなかったんです」
そう振り返るのは、68歳の美佐子さん(仮名)です。
美佐子さんは月約16万円の年金を受け取り、夫と2人で暮らしています。実家から車で2時間ほど離れた場所に住んでおり、母親とは月に数回電話をするほか、年に数回帰省していました。
母親は92歳で亡くなるまで、実家で暮らしていました。父親は十数年前に亡くなっており、母親の近くには72歳の兄・信夫さん(仮名)が住んでいました。
葬儀を終えて数週間後、美佐子さんのもとに兄から電話がかかってきます。
「母さんの通帳を整理していたら、預金が全部で4,000万円くらいあったんだ」
美佐子さんは耳を疑いました。
「えっ、そんなに? 母さん、いつもお金がないって言っていたじゃない」
母親は生前、買い物に行くと値引き品を選び、古い家電も壊れるまで使い続ける人でした。美佐子さんが新しい炊飯器を買おうかと提案しても、「まだ使えるから、もったいない」と断っていたそうです。
「年金だけで暮らしているから、節約しているんだと思っていました」
ところが、兄から聞かされた話はそれだけではありませんでした。
「実は母さん、俺が離婚したときに、まとまったお金を貸してくれたんだ」
信夫さんは15年ほど前に離婚し、住まいを移す際、母親から500万円を借りていたといいます。
「そんな話、初めて聞いたわ」
美佐子さんが驚くと、信夫さんは続けました。
「母さんが、お前には心配をかけたくないから言わなくていいって」
美佐子さんは、母親が兄を援助していたことにも、兄がその事実を長年黙っていたことにも戸惑いました。
「私は何も知らなかったんです。兄が大変だったことも、母が500万円も出していたことも」
さらに信夫さんは、母親の介護が必要になってからの事情も話し始めました。
