「来てくれるのが当たり前だった」息子夫婦の本音を知って
数日後、孝子さんは健司さんに改めて連絡しました。
「この前は無理に誘ってごめんね。でも、毎年の帰省がそんなに負担だったなんて、知らなかったの」
すると、健司さんはこれまで言えなかった気持ちを打ち明けました。
「帰るのが嫌だったわけじゃないよ。ただ、年末は仕事も忙しいし、帰省の準備もある。家に帰ってきたら、もう休みが終わる感じなんだ」
健司さんによると、子どもたちも成長し、年末年始には友人と遊んだり、自宅で好きなことをしたりしたいと言うようになったそうです。
さらに孝子さんが毎年用意していた料理についても、意外な話がありました。
「母さんがいろいろ作ってくれるのはありがたいよ。でも、妻も毎回『手伝わなきゃ』って気を使ってるんだ」
孝子さんは驚きました。
「そんなの、気にしなくていいって言っていたのに」
「そう言われても、ずっと座ってるわけにはいかないだろうし」
確かに、息子一家が来ると、孝子さんは朝から台所に立っていました。健司さんの妻も、そのたびに食器を運んだり、片づけを手伝ったりしてくれていたのです。
「私はみんなでにぎやかに過ごすのが楽しくて。向こうも同じ気持ちだと思っていたんですね」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、子どもがいる高齢者のうち、子どもとの「同居ではなく近居」を希望する人は32.8%、「同居も近居もしたくない」と答えた人は14.1%でした。親子の住まい方や望ましい距離感についても、考え方はさまざまです。
孝子さんは、これまでの帰省を振り返りました。
孫たちが小さかった頃は、帰省すると庭で遊び、祖父母と一緒に出かけるのを楽しみにしていました。しかし最近は、食事が終わるとスマートフォンを見たり、部屋で過ごしたりする時間が増えていたといいます。
「大きくなったんだから、当たり前ですよね。でも、私たちは昔のままのつもりだったんです」
その後、孝子さんは息子に「今年は家でゆっくりしてね」とLINEを送りました。健司さんからは「ありがとう。年が明けたら、みんなでビデオ通話しよう」と返信がありました。
修三さんとも話し合い、今年の正月は夫婦2人で近場の温泉に出かけることにしたそうです。
「寂しくないと言ったら嘘になります。でも、息子たちには息子たちの暮らしがありますから」
孝子さんは、次に会うときは泊まりがけの帰省にこだわらず、外で食事をするのもいいかもしれないと考えています。
「無理して来てもらうより、お互いに楽しめる形で会えたらいいですね」
子どもの独立や孫の成長に伴い、家族の集まり方は少しずつ変化していきます。長く続いてきた習慣ほど、変えることに寂しさを感じるかもしれません。帰省の頻度や過ごし方について互いの希望を伝え合うことが、無理なく交流を続けるための一歩になるでしょう。
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