(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、銀行での手続きや家計の管理を負担に感じることがあります。そんなとき、身近な家族が手助けしてくれれば心強いでしょう。しかし、財産の管理を任せる際には、本人が使い道や残高を確認できる仕組みも必要です。家族への信頼から細かな確認を省いてしまい、後になって思わぬ問題が発覚するケースもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「少し借りただけだよ」3ヵ月で消えていた300万円

銀行で確認できたのは、生活費用の普通預金口座から、3ヵ月間で合計約300万円がATMで引き出されていたという事実でした。

 

俊夫さんが頼んだ生活費は、そのうち約30万円。残りの約270万円については、使い道が分かりません。

 

「何かの間違いだと思いました。息子がそんなことをするはずがないと」

 

帰宅後、俊夫さんは直樹さんに電話をかけました。

 

「通帳を見てきた。あのお金はどうしたんだ?」

 

しばらく沈黙したあと、直樹さんはこう答えたそうです。

 

「ごめん。少し借りただけだよ。必ず返すから」

 

直樹さんは数年前から小さな事業を営んでいましたが、最近は資金繰りが厳しくなっていました。父親に相談できないまま、預かったカードで現金を引き出し、事業の支払いに充てていたのです。

 

「借りるなら、どうして先に言わなかったんだ」

 

「心配をかけたくなかったんだ。すぐ返せると思って……」

 

俊夫さんが最もショックを受けたのは、お金が減ったこと以上に、息子が黙って使っていたことでした。

 

厚生労働省『令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果』によると、家族などの養護者による高齢者虐待と判断された件数は1万7,133件。そのうち、経済的虐待が確認された割合は16.4%でした。

 

家族が本人の承諾なく預金を使う行為は、状況によって経済的虐待に該当する場合があります。親子間であっても、財産の使い道を本人に無断で決めてよいわけではありません。

 

俊夫さんは銀行に事情を説明し、キャッシュカードを停止して再発行の手続きを進めました。また、通帳などを返してもらい、今後の管理方法を見直すことにしました。

 

直樹さんとは話し合いを重ね、無断で使った金額と返済方法を文書に残すことに。返済が滞った場合も含め、法律の専門家に相談しています。

 

「息子を信じたい気持ちは今もあります。でも、何も確認せずに任せてしまったことは後悔しています」

 

現在、俊夫さんは銀行に代理人による手続きの仕組みを相談しながら、日常的な支払いをできるだけ口座振替にまとめています。

 

直樹さんからの返済は始まったものの、全額が戻るかどうかは分かりません。

 

「親子だからこそ、最初にきちんと決めておくべきだったんでしょうね」

 

高齢期の財産管理では、家族の協力が必要になる場面もあります。だからこそ、任せる手続きの範囲を明確にし、本人が定期的に残高や取引内容を確認できるようにしておくことが重要です。必要に応じて金融機関や専門家に相談し、安心して管理を続けられる方法を考えたいものです。

 

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