(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの独立や定年退職を機に、住み慣れた家での暮らしを見直す人もいるでしょう。特に郊外の一戸建てでは、年齢を重ねるにつれて庭の手入れや階段の上り下り、車での買い物などが負担になる場合があります。一方、長年暮らした家を手放すことには迷いも伴います。実際に住み替えて初めて、それまでの生活で感じていた不便さに気づくこともあるようです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「この家でずっと暮らすつもりだった」住み替えを決めた夫婦

「もっと早く引っ越せばよかったね」

 

そう笑い合うのは、73歳の正弘さん(仮名)と71歳の妻・和子さん(仮名)です。夫婦は昨年、約35年間暮らした郊外の一戸建てを売却し、駅前の中古マンションへ引っ越しました。

 

夫婦の年金収入は合計月約32万円。住宅ローンはすでに完済しており、当初は一戸建てで老後を過ごすつもりだったといいます。

 

「子どもたちを育てた家ですし、庭もあって気に入っていました。わざわざ引っ越す必要はないと思っていたんです」

 

ただ、暮らしのなかには少しずつ不便が増えていました。

 

最寄り駅まではバスで約20分。スーパーや病院へ行くにも車が欠かせず、普段の運転は正弘さんが担当していました。

 

「昔は何とも思わなかったんですが、最近は夜の運転を避けるようになって。雨の日に出かけるのも面倒になりました」

 

和子さんも、庭の草取りや2階の掃除に負担を感じるようになっていたそうです。

 

「使っていない部屋が3つもあるのに、掃除だけはしないといけないんですよね」

 

転機となったのは、正弘さんが車を運転しなくなった場合の生活を考えたことでした。ある日、和子さんが「車がなくなったら、ここで暮らすのは大変じゃない?」と切り出したのです。

 

正弘さんも以前から気になっていたものの、長年住んだ家を手放す決心がつかずにいました。

 

そこで夫婦は、まず駅前の中古マンションを見学してみることに。

 

訪れた物件は、駅から徒歩5分の場所にある築15年ほどのマンション。スーパーやドラッグストアが徒歩圏内にあり、建物にはエレベーターも設置されていました。

 

「駅に近いだけで、こんなに便利なのかと驚きました」

 

一方、気になったのは費用です。

 

自宅の査定額は約2,800万円。購入を検討したマンションは約3,400万円で、差額は600万円ありました。

 

さらに売買や引っ越しに伴う諸費用も必要です。

 

夫婦は預貯金約2,500万円のうち、差額と諸費用を合わせて約850万円を充てることにしました。

 

「安い買い物ではありません。でも、これから先の暮らしを考えたら、便利な場所に住む価値はあると思ったんです」

 

子どもたちにも相談したうえで、夫婦は住み替えを決断しました。

次ページ「車がなくても困らない」引っ越して実感した暮らしの変化

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