(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が一人暮らしをしていると、離れて暮らす子どもは何かと心配になるものです。しかし親自身は「まだ一人でできる」と考え、家族からの手助けを断ることもあるでしょう。特に、長年自立して暮らしてきた人ほど、生活上の困りごとを打ち明けにくい場合があります。久しぶりに実家を訪ねたことで、親の暮らしぶりが以前と変わっていることに気づくケースもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「迷惑をかけたくなかった」父が隠していた暮らしの変化

奈緒さんは、その日のうちに冷蔵庫の中を父と一緒に確認し、傷んだ食品を処分しました。

 

食器を洗いながら、改めて尋ねます。

 

「どうして、こんなになるまで何も言わなかったの?」

 

すると誠一さんは、少し不機嫌そうに答えました。

 

「お前だって仕事も家庭もあるだろう。こんなことで呼びつけられるか」

 

奈緒さんには夫と高校生の子どもがいます。父は、娘に余計な負担をかけたくなかったのでしょう。

 

ただ、食事の準備だけでなく、掃除やごみ出しも以前より負担になっているようでした。

 

「ごみの日を忘れることもあるし、台所を片づけようと思っても、つい後回しにしてしまうんだ」

 

内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしの人が同年代人口に占める割合は、2020年時点で男性15.0%、女性22.1%でした。2050年には男性26.1%、女性29.3%になると推計されています。高齢者の一人暮らしが増えるなか、日々の生活をどのように支えるかが重要になっています。

 

奈緒さんは、父が何でも一人でできると信じていたわけではありません。ただ、本人が手助けを嫌がるため、踏み込むことをためらっていたといいます。

 

「父の気持ちを尊重していたつもりでした。でも、実際の暮らしをきちんと見ていなかったんですね」

 

その後、奈緒さんは父に、食事の宅配サービスを利用してみないかと提案しました。

 

「毎日じゃなくてもいいから、週に何回か頼んでみない?」

 

誠一さんは最初、「そんなものはいらない」と断りました。しかし奈緒さんが「私が毎日作りに来るわけじゃないよ。お父さんが自分で選んで頼むんだよ」と説明すると、少し興味を示したそうです。

 

まずは週3回、夕食用の弁当を届けてもらうことにしました。費用は誠一さん自身の年金から支払います。

 

また、奈緒さんは地域包括支援センターにも相談し、今後、家事の負担がさらに増えた場合に利用できる支援について確認しました。生活の変化が続くようなら、かかりつけ医にも相談する予定です。

 

「全部やってもらうのは嫌だけど、食事くらいなら頼んでもいいかもしれないな」

 

最近の誠一さんは、宅配弁当の献立表を見ながら、好きな料理が届く日を楽しみにしているといいます。

 

高齢の親が手助けを拒む背景には、自分の生活を自分で決めたいという思いや、家族に負担をかけたくないという気持ちがある場合もあります。本人の希望を尊重しながら、食事や衛生面などの生活状況を確認し、必要に応じて外部のサービスを取り入れることが大切でしょう。

 

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