(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎えると、夫婦の生活は大きく変わります。給与収入が年金に切り替わり、これまでの家計を見直す家庭もあるでしょう。そのなかで、長年専業主婦として暮らしてきた妻が、老後の生活費を補うために働くことを考えるケースもあります。しかし何十年も仕事から離れていると、再就職に不安を感じるのも無理はありません。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「いきなり週5日でなくてもいいんですよ」窓口で聞いた言葉

ハローワークの窓口で、千鶴さんはこれまでの経歴を説明しました。

 

「結婚してからずっと専業主婦で、40年くらい働いていないんです。こんな年齢でも応募できる仕事はあるんでしょうか」

 

担当者は希望する勤務時間や仕事内容を尋ねたあと、こう話したといいます。

 

「いきなり週5日で働こうとしなくてもいいんですよ。まずは週2、3日から探してみませんか」

 

千鶴さんは、少し拍子抜けしました。

 

「働くなら、毎日決まった時間に出勤しなきゃいけないと思っていたんです」

 

担当者からは、清掃や品出し、調理補助など、未経験でも応募できる求人があることを説明されました。ただし、採用されるかどうかは求人ごとの条件や選考によります。

 

総務省『労働力調査(基本集計)2025年平均結果』によると、65歳以上の女性の就業率は19.6%でした。高齢期にも働く女性が一定数いる一方、長いブランクを経て仕事を始める場合には、体力や経験に合った職場を探す必要があります。

 

千鶴さんが気になったのは、自宅近くのスーパーの品出しの求人でした。

 

週3日、午前中の4時間勤務で、時給は1,200円。月12日働けば、額面で約5万7,600円になります。

 

「これなら、私にもできるかもしれないと思いました」

 

ただ、すぐに応募する決心はつきませんでした。

 

帰宅後求人票を見せると、信夫さんは「いいじゃないか」と喜びましたが、千鶴さんは一つ条件を出しました。

 

「私が働くなら、あなたにも家事をしてほしい。今までどおり全部私がやるのは無理だから」

 

信夫さんは少し驚いた様子でしたが、うなずきました。

 

それから夫婦で家事の分担を話し合い、信夫さんが平日の昼食作りと掃除機がけを担当することに。

 

千鶴さんはスーパーの求人に応募し、面接を経て採用されました。

 

働き始めて1ヵ月。商品を並べる場所を覚えるのに苦労することもありますが、同僚に教わりながら仕事を続けています。

 

「最初は、お金のために仕方なく働くつもりでした。でも、仕事を覚えて『ありがとう』と言ってもらえると、うれしいものですね」

 

もちろん、立ち仕事に疲れる日もあり、今後も同じペースで働けるかは分かりません。

 

「無理をしてまで続けるつもりはありません。でも、働ける場所があると分かっただけでも、少し気持ちが変わりました」

 

老後の家計を支える方法として、再就職は一つの選択肢になります。ただし、働く本人の希望や健康状態を尊重し、家事の分担や支出の見直しも含めて考えることが大切です。夫婦で生活の変化を受け止めながら、無理なく続けられる暮らし方を探していきたいものです。

 

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