「家は高く売れるそうですが…」役所で打ち明けた事情
「固定資産税が払えません。どうしたらいいでしょうか」
東京都内の税事務所を訪れたのは、78歳の久美子さん(仮名)です。
久美子さんは、都内の住宅街にある築45年の一戸建てで暮らしています。夫を亡くし、現在は一人暮らし。子どもはおらず、年金収入は月約12万円です。
自宅は、夫が会社員だったころに購入したもの。住宅ローンはすでに完済しています。
「夫と一緒に選んだ家ですから、できれば最後までここで暮らしたいんです」
ところが近年、久美子さんは家計に不安を感じるようになりました。
食費や光熱費などを切り詰めても、毎月の生活費は約13万円。年金だけでは足りず、少しずつ貯蓄を取り崩していました。
さらに負担になっていたのが、固定資産税と都市計画税です。
「年間で合わせて28万円ほどかかるんです。以前は貯金から払っていましたが、最近はそれも難しくなってきて」
自宅の修繕や給湯器の交換などが重なり、預貯金は約90万円まで減っていました。
そんな久美子さんのもとに、近所の不動産会社から売却を勧める案内が届きます。試しに査定を依頼したところ、提示された売却価格の目安は約1億5,000万円でした。
「そんな金額になるなんて、驚きました。昔は今ほど高い場所ではなかったんですよ」
ただし、これは土地と建物を合わせた推定売却価格です。固定資産税の計算に使われる評価額とは異なります。
久美子さんの自宅は、土地の面積が約130平方メートル。住宅用地には課税標準の特例があり、200平方メートル以下の部分については、固定資産税の課税標準が原則として評価額の6分の1になります。
そのため、売却価格が1億5,000万円だからといって、その金額に税率を掛けて固定資産税が決まるわけではありません。
それでも年金月12万円の久美子さんにとって、年間約28万円の負担は小さくありませんでした。
「家が高く売れると言われても、今すぐ使えるお金ではありませんから」
今年の納税通知書を受け取った久美子さんは、期限までに支払うことが難しいと感じ、役所の窓口へ相談に向かったのです。
