(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後は自然に囲まれた場所で暮らしたい。そんな希望をかなえるため、都市部から地方へ移住する人もいます。庭のある家で季節の移ろいを楽しむ生活には魅力がありますが、交通手段や地域との付き合いなど、住んでみて初めて分かることもあります。夫婦で同じ移住先を選んでも、毎日の過ごし方に求めるものが違えば、少しずつ不満が生まれることもあるでしょう。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「ここなら理想の老後を過ごせる」庭付き古民家で始めた新生活

65歳の隆夫さん(仮名)は、長年勤めた会社を退職したことを機に、同い年の妻・恵子さん(仮名)と地方への移住を決めました。

 

夫婦の年金収入は合わせて月約22万円。貯蓄は約3,000万円あり、住宅ローンも完済していました。

 

「退職したら、自然の中でのんびり暮らしたい。ずっとそう思っていたんです」

 

隆夫さんが希望したのは、庭のある古民家でした。家庭菜園で野菜を育て、休日には近くの山を歩く。会社勤めをしていたころから、そんな生活に憧れていたといいます。

 

恵子さんも、最初は前向きでした。

 

「私も都会の慌ただしさから離れたいと思っていました。庭に花を植えたり、静かな場所で読書をしたりするのもいいなって」

 

夫婦は何度か現地を訪れ、築50年ほどの木造住宅を購入しました。

 

購入価格は約650万円。水回りの改修や屋根の補修、引っ越し費用などを含めると、移住にかかった費用は約1,100万円でした。

 

以前住んでいたマンションは売却し、その代金は今後の生活資金として確保しました。

 

移住先は山あいの集落で、最寄りのスーパーまでは車で約20分。病院や駅へ行くにも車が必要です。

 

「不便なのは分かっていました。でも、車があるし、何とかなると思っていたんです」

 

移住して最初の1年は、充実した毎日でした。

 

隆夫さんは朝から庭に出て、畑を耕したり、伸びた枝を切ったり。恵子さんも花壇を作り、季節の花を育てることを楽しんでいました。

 

近所の人から野菜を分けてもらうこともあり、都会では経験しなかった交流が生まれます。

 

「こんな暮らしがしたかったんだよ」

 

隆夫さんは、何度もそう口にしていました。

 

ところが移住から2年目に入ったころ、恵子さんの気持ちに変化が表れ始めます。きっかけは、以前住んでいた街の友人から届いた食事会の誘いでした。

 

「久しぶりにみんなで集まるんだけど、来られない?」

 

行きたい気持ちはあったものの、電車とバスを乗り継ぐと片道3時間以上。日帰りでは慌ただしく、結局断ることにしました。

 

その後も友人たちの集まりに参加できないことが続き、恵子さんは次第に寂しさを感じるようになったといいます。

 

「庭仕事も楽しいけれど、毎日それだけでは物足りなくなってきたんです」

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