(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの結婚は、親にとって大きな節目です。独立して家庭を築く姿に安心する一方、結婚式や新生活の準備などで、親に金銭的な援助を求めるケースもあります。できる限り力になりたいと思っても、退職後は収入が限られ、将来の生活費や医療・介護費用への備えも必要です。子どもへの援助をどこまで行うか、判断に迷う家庭もあるでしょう。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「少し相談があるんだけど」結婚が決まった娘からの頼み

68歳の修一さん(仮名)は、66歳の妻・和子さん(仮名)と2人暮らしです。

 

夫婦の年金収入は合わせて月23万円。貯蓄は約3,000万円で、住宅ローンを完済した自宅に住んでいます。

 

ひとり娘の美咲さん(仮名)は36歳。都内で会社員として働き、長く一人暮らしをしていました。

 

「娘が自分で生活しているのは分かっていましたが、親としては将来のことが気になっていました」

 

そんな美咲さんから、交際していた男性との結婚が決まったと報告を受けたのは、今年の春のことでした。相手は同年代の会社員で、何度か顔を合わせた修一さん夫婦も、穏やかな人柄に好印象を持っていました。

 

「これで安心だな。2人で支え合って暮らしていってくれれば、それで十分だと思いました」

 

ところが結婚の報告から約1ヵ月後、美咲さんが実家を訪れた際、思いがけない相談を持ちかけられます。

 

「お父さん、お母さん。少し相談があるんだけど……」

 

美咲さん夫婦は、結婚を機にマンションの購入を考えていました。

 

希望する物件は約5,500万円。共働きで住宅ローンを組む予定ですが、諸費用や引っ越し代などを考えると、手元の資金をできるだけ残しておきたいといいます。

 

「もし可能だったら、頭金として1,000万円くらい援助してもらえないかな」

 

修一さんは、すぐに返事ができませんでした。

 

「結婚祝いなら、ある程度は考えていました。でも、いきなり1,000万円と言われるとは思わなくて」

 

娘からは、友人が親に住宅資金を援助してもらった話も聞かされました。

 

「もちろん無理なら仕方ないんだけど、住宅資金の贈与には税金の特例もあるって聞いたから」

 

美咲さんに悪気はなかったのでしょう。しかし、修一さんは、娘が『両親には3,000万円の貯蓄があるのだから、1,000万円くらい援助してもらえるだろう』と考えているように感じ、複雑な気持ちになりました。

 

「3,000万円あるといっても、これから何年生きるか分かりません。夫婦2人の生活を支えるお金ですから」

 

その場では「少し考えさせてほしい」と答え、娘を見送りました。

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