(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を機に、自然豊かな土地への移住を考える人もいるでしょう。海を眺めながら過ごす穏やかな毎日は、長年働いてきた人にとって魅力的に映るかもしれません。しかし住み慣れない地域での生活には、事前には分からなかった苦労もあります。特に中古住宅を購入する場合、建物の状態や維持管理にかかる費用を十分に確認しておく必要があります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「毎朝、海を眺めて暮らしたい」夫婦が選んだ築30年の一軒家

67歳の正彦さん(仮名)は、65歳の妻・恵子さん(仮名)と2人暮らしです。

 

夫婦の年金収入は合わせて月20万円。正彦さんが退職時に受け取った退職金は1,800万円でした。

 

以前は都市部のマンションに暮らしていましたが、正彦さんが退職してから、夫婦で地方への移住を考えるようになりました。

 

「旅行で訪れた海辺の町が気に入っていたんです。朝起きて海が見える家で暮らせたら、最高だろうなと思っていました」

 

不動産情報を探すうちに、海から約300メートルの高台に建つ一軒家を見つけます。

 

築30年の木造住宅で、価格は850万円。2階の窓から海が見え、庭も付いていました。

 

「少し古いけれど、この値段なら手が届く。退職金も残せると思いました」

 

夫婦は現地を見学し、室内に大きな雨漏りの跡がないことなどを確認しました。ただ、専門家による建物状況調査までは依頼しなかったといいます。

 

購入費用や諸経費、引っ越し代などを合わせて約1,000万円を支払い、以前のマンションは売却。売却代金は今後の生活資金として確保しました。

 

移住当初は、思い描いていた暮らしそのものでした。

 

朝は海を眺めながらコーヒーを飲み、午後は近くの港まで散歩。恵子さんも庭に花を植え、穏やかな時間を楽しんでいました。

 

ところが梅雨を迎えるころから、家の様子が変わり始めます。

 

「押し入れを開けると、湿ったようなにおいがするんです。最初は雨が続いたせいだと思っていました」

 

やがて、北側の部屋の壁紙に黒い斑点が現れました。窓の金具にもさびが目立つようになります。

 

除湿機を購入し、家具を壁から離してみましたが、湿気はなかなか改善しません。

 

さらに強い雨が降った翌日には、窓枠の下に水が染みた跡が残っていました。

 

正彦さんは業者に点検を依頼。窓まわりの防水処理が劣化し、一部に雨水が入り込んでいる可能性があると説明されました。

 

「古い家だから多少の修理は必要だろうと思っていました。でも、こんなに早く問題が出るとは……」

 

夫婦は娘に心配をかけたくないと考え、詳しい事情を伝えずにいました。

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