65歳母が初めて口にしたお願い
その夜、由美子さんは夫に気持ちを打ち明けました。
「孫たちに来てほしくないわけじゃないの。でも、泊まりの準備も食事も、もう一人では大変なのよ」
夫は驚いた様子でした。
「そんなに負担だったのか。言ってくれれば手伝ったのに」
「手伝ってほしいことを考えて、お願いするのも私なのよ」
由美子さんがそう答えると、夫は黙ってしまったそうです。
総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の社会保障給付が22万8,614円、消費支出が26万3,979円となっています。可処分所得と消費支出の差は、月4万2,434円の不足です。
由美子さん夫婦も年金収入が月23万円ほどで、帰省時の出費が重なる月は、普段以上に貯蓄を取り崩していました。
数日後、由美子さんは娘に電話をかけました。
「来月なんだけど、泊まりじゃなくて日帰りにしてもらえないかな」
娘は「何か予定があるの?」と尋ねました。
由美子さんは、食事の準備や片づけが以前より負担になっていること、帰省後に疲れが残ることを初めて話しました。
すると娘は、少し申し訳なさそうに言いました。
「今まで全部、お母さんがやってくれていたから、そんなに大変だと思ってなかった」
娘も、実家では母親に甘えていたと振り返りました。
話し合った結果、次の連休は日帰りで訪ね、昼食は娘一家が買ってくることに。今後泊まる場合も、食事は外食や持ち帰りを利用し、寝具の準備と片づけは家族で分担すると決めました。
夫も、布団の出し入れや食後の片づけを担当することになりました。
「娘に言ったら嫌な顔をされると思っていました。でも、ちゃんと話せてよかったです」
次の訪問日、娘一家は昼前に到着しました。皆で昼食を食べ、午後は近くの公園へ。夕方には帰っていきました。
「帰った後も元気が残っていて、久しぶりに夫とゆっくり夕飯を食べられました」
由美子さんは、これからも孫たちに会う時間を大切にしたいと考えています。ただ、以前のように一人で準備を抱え込むつもりはありません。
家族を迎える際の負担は、宿泊日数や人数、家事の分担によって変わります。親世代が無理を重ねる前に、食事や寝具の準備、費用負担について具体的に話し合うことが、気持ちよく交流を続けるために大切でしょう。
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