10月6日~10月12日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・先週米ドル/円は小動きに終始。大きく下落してきたユーロも先週は下げ渋り。
・仏など財政規律への懸念は強いが、2012年の欧州債務危機再燃説は悲観しすぎか!?
・米ドル/円は159円以上では介入再開の可能性もありそうなため、今週の予想レンジは155~160円。
先週の振り返り=大きく下落してきたユーロも先週は下げ渋る
米ドル/円はわずか1円強の値幅、小動きに終始
先週の米ドル/円は158円前後での動意の薄い展開に終始しました。手掛かり材料に欠けるなかで、下がったところでは米ドル買い・円売りが根強い一方、158円台後半からは円安阻止への為替介入警戒感も強まるようで、1週間を通じた値幅はわずか1円強にとどまりました(図表1参照)。
そんな米ドル/円に変わり、このところ2026年に入ってからの安値を更新、注目を集めてきたのがユーロ/円でした。ただそんなユーロ/円も、先週は下げ渋りが目立つ展開となりました(図表2参照)。
金利差ユーロ劣位拡大が一服=ユーロ下げ渋りの理由
ユーロ/円が先週下げ渋ったのは、9月以降対米ドルで大きく下落してきたユーロが下げ渋った影響が大きかったでしょう。この間のユーロ/米ドルの値動きは、基本的に独米金利差(米ドル優位・ユーロ劣位)の変化に沿ったものでした。先週は、それまで続いてきた独米金利差ユーロ劣位拡大が一服、このためユーロ安・米ドル高も一服したと言えそうです(図表3参照)。
9月以降大きく広がった独米金利差ユーロ劣位拡大は、当初は世界的な長期金利上昇のなかで起こったものでした。独米ともに長期金利が上昇した場合、金利水準が「米国>独」であることから金利差ユーロ劣位が拡大します(図表4参照)。
その上、10月に入ったところで仏などの財政規律への懸念が大いに注目されるようになると、欧州内での「質への逃避」から独の長期金利は低下、それが一段の独米金利差ユーロ劣位拡大をもたらしましたが、先週はそういった動きも一息つくところとなりました。
以上見てきたように、世界的な長期金利上昇と、欧州内での仏の財政懸念に伴う「質への逃避」がともに先週は一息ついたことから、独米金利差ユーロ劣位拡大に沿ったユーロの下落も、対米ドル、そして対円でも先週は足踏みしたといったところでしょう。
2012年「欧州債務危機」再燃説は悲観しすぎではないか!?
欧州では2010~2012年に債務危機が広がりました。きっかけはギリシャで財政赤字が過小に説明されていたことが明らかになったことで、これを受けてギリシャの債券が急落するといった「ギリシャ・ショック」でした。やがてそれは欧州内のギリシャ以外の地域にも波及、とくにイタリア、スペインといった欧州の大国の10年債利回りも7%以上に急騰(債券価格は急落)するようになると、ユーロの信認が揺らぎかねない状況にまで追い込まれました。
最近にかけての仏を中心とした財政規律への懸念は、この2012年にかけて展開した欧州債務危機のような深刻な事態に広がりかねないかといえば、それは悲観しすぎではないでしょうか。
欧州債務危機は、ECB(欧州中央銀行)による条件付きながら問題とされた国の債券を事実上無制限に購入するといったOMT(国債買い入れプログラム)発動の決定をきっかけに収拾に向かいました。こういった債務危機対策のノウハウが構築されたことの意味は小さくないでしょう。欧州債務危機のようにユーロが再び信認が試されるような事態に追い込まれるというのは、悲観しすぎのように思います。
今週の注目点=159円以上なら米ドル売り介入再開か!?
国際会議や米経済指標発表で世界的長期金利上昇への影響は?
今週は、IMF(国際通貨基金)総会など国際会議が予定されており、世界的な長期金利上昇への影響などが注目されることになりそうです。また米経済指標では、CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といったインフレ指標、そして小売売上高など注目度の高い指標の発表が予定されています。
これらを受けて、仮に世界的な長期金利上昇が再燃した場合は、日欧に比べて米国の金利水準が高いことから、金利差米ドル優位拡大が米ドル買い材料になる可能性はあるでしょう。ただ米ドル/円が159円を大きく超えるようなら、日米通貨当局による米ドル売り・円買い介入が再開される可能性も要注意ではないでしょうか。
今週の米ドル/円は155~160円で予想
9月に入り一時152円まで米ドル安・円高が広がった局面では、ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円買い越し(米ドル売り越し)が急拡大しました。その後米ドル/円が159円まで米ドル高・円安に戻すなかでこの円買い越しは縮小したものの、それでも6日時点で6万枚と円買い越しを維持した状況が続きました(図表5参照)。
私は、このようなヘッジファンドの円買い継続は、同業界の出身者で関係が深いと見られるベッセント米財務長官が進める円安是正戦略と関係している可能性に注目しています。もしもその見方が正しければ、日米の通貨当局はヘッジファンドの円買い取引の損失転落回避に動く可能性が高いでしょう。
ヘッジファンドの円買いポジションの損失分岐点の目安、米ドル/円の120日MA(移動平均線)は159円台で推移していることから、この円買い取引の損失回避を目指すなら159円を大きく超える米ドル高・円安に対しては介入が再開される可能性があるでしょう(図表6参照)。
以上を踏まえると、米ドル/円が159円を大きく超えて上昇する可能性は低いのではないでしょうか。介入が再開された場合、これまでの経験からすると、その日のうちに4~5円と大きく米ドル安・円高に向かう可能性があります。その意味で、今週の米ドル/円は155~160円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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