息子に電話をかけると「そんな電話してないよ」
電話を切られたあと、一郎さんは「もしかしたら、息子は本当に困っていたのかもしれない」と一抹の不安に襲われます。これまでは自分から連絡することはほとんどなかったのですが、一郎さんは意を決して息子に電話をかけることにしました。
数回の呼び出し音のあとに、息子の声が聞こえます。今日は在宅で仕事をしているのか、電話口からは子どもが話す声が聞こえてきます。
「急にどうしたの? 何かあった?」と心配する息子の反応を受けて、一郎さんは数分前の電話が詐欺だったことを確信します。念のために息子に一部始終を話すと、「そんな電話してないよ」と言われました。
「信じたふり」が功を奏すとは限らない
今回、一郎さんは偶然にも電話口の違和感に気づきました。ただし、同じ方法を誰にでもおすすめできるわけではありません。相手を問い詰めたり、わざと話を引き延ばしたりすると、相手が逆上する可能性もあります。
大切なのは、「電話の相手が本当に家族なのか」を、その電話だけで判断しないことです。
たとえば「お金が必要」「今日中に振り込んで」「誰にも言わないで」といった話が出たら、一度電話を切り、本人に普段使っている電話番号から確認する方法があります。
「お金の話が出たら、いったん電話を切って確認する」というルールを家族間で事前に決めておくのも有効です。
特殊詐欺の被害額は前年同期を大きく上回る
警察庁によると、2026年上半期のオレオレ詐欺は4,466件発生しており、被害額は84.2億円(前年同期比+5.5億円 / +7.0%)となっています。
自分は騙されないと思っていても、突然電話がかかってくれば判断を急かされることがあります。だからこそ、「いったん電話を切る」という行動そのものを決めておくことが大切です。
疑問を感じたら時間を置く習慣が大切
詐欺を防ぐうえで大切なのは、相手の話を完璧に見破ることではなく、「その場でお金を動かさない仕組み」をつくっておくことです。
たとえば、家族から突然お金を求められた場合は、いったん電話を切って、本人の登録済みの電話番号にかけ直すというルールを決めておきます。さらに、家族間で合言葉を決めておけば、本人確認の手段を増やせます。
今回のように、犯人の「わざとらしい演技」がきっかけで詐欺に気づけることもありますが、犯人の話し方や声だけを判断材料にするのは危険です。
「もしかしたら詐欺かもしれない」と思った時点で、電話を切って確認する。この一呼吸が、これまで築いてきた大切な資産を守ることにつながります。詐欺対策では、怪しい電話がかかってきたときの対応ルールを家族で共有しておくことが重要だと考えましょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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