(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす高齢の親と、電話やメッセージで定期的に連絡を取っている人もいるでしょう。「元気にしている」と聞けば安心しますが、日々の暮らしぶりまですべて分かるわけではありません。年齢とともに、それまで普通にできていた家事が少しずつ負担になることもあります。

82歳母が片付けを後回しにしていた理由

その日の午後、直樹さんは母と一緒に段ボールを片付けました。十数分もあれば終わると思っていたものの、久美子さんは途中で椅子に座りました。

 

「疲れた?」

 

「ずっとかがんでいると腰が痛くなるのよ」

 

直樹さんはそこで、母が片付けを後回しにしていた理由を少し理解したといいます。

 

何か一つが突然できなくなったわけではありません。段ボールを畳むことも、新聞を束ねることもできます。ただ、以前なら何でもなかった作業に時間がかかり、疲れやすくなっていました。

 

「できないわけじゃないのよ。だから、あなたにわざわざ言うほどでもないと思ってたの」

 

久美子さんにとって「元気」という言葉も嘘ではありませんでした。自分で食事を作り、買い物にも行く。通院も一人でできます。

 

一方で、直樹さんが1年前に見た暮らしを、そのまま維持できているわけでもありませんでした。

 

厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち単独世帯は32.7%を占めています。また、65歳以上の人のみで構成される世帯は62.3%です。高齢者だけで暮らす世帯は珍しい存在ではありません。

 

直樹さんは「一緒に住もう」とは言いませんでした。久美子さん自身も、住み慣れた家を離れるつもりはありません。

 

代わりに親子で、今後どの家事を一人で続け、どこから人の手を借りるかを話しました。

 

まず、重い日用品はこれまで通り通販を利用します。

 

段ボールなどを一度にため込まないよう、直樹さんが帰省したときには一緒に整理することにしました。さらに、久美子さんが負担を感じるようになれば、民間の家事代行や自治体で利用できる支援についても調べることにしています。

 

「以前は『一人で暮らせるか、暮らせないか』の二択で考えていたんです。でも母を見ていると、その間があるんですよね。暮らせてはいるけれど、少し大変になったことがある。そこを手伝えばいいのかなと思いました」

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしは今後も増えると見込まれています。

 

高齢の親が「大丈夫」と話していても、その言葉だけから日々の生活をすべて判断することは難しいでしょう。かといって、部屋が以前より散らかっていることだけで、直ちに一人暮らしが難しいと判断することもできません。

 

食事や買い物、掃除、洗濯、ゴミ出しなど、どの作業に負担を感じるようになったのか。久しぶりに親の家を訪れたときには、本人の話を聞きながら、以前と変わった部分を具体的に確認することも、今後の暮らし方を考えるきっかけになるでしょう。

 

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