長距離便はビジネスクラス、ホテルも贅沢に…退職後の楽しみ
「働いているころは、お金より時間がなかったんです」
そう話すのは、69歳の隆夫さん(仮名)です。
隆夫さんは大学卒業後、メーカーに勤務。管理職も経験し、65歳で退職しました。妻とは50代で離婚しており、現在は一人暮らしです。
住宅ローンは60代前半で完済。退職金を受け取った時点で、それまでの預貯金などを合わせた金融資産は約6,000万円ありました。
年金も受給しており、日常生活だけなら大きく資産を取り崩す必要はないだろうと考えていたそうです。
隆夫さんには、退職したらやりたいことがありました。海外旅行です。
会社員時代にも海外へ行く機会はありましたが、長期休暇を取りにくく、行き先は近場が中心。そこで退職翌年、まず10日間ほどかけてヨーロッパを巡りました。
そのとき選んだのがビジネスクラスです。
「もう65歳を過ぎているし、十何時間もエコノミーに座るのはきついかなと思って。これくらいはいいだろうと」
ホテルも、現役時代の旅行より少し上のクラスを選びました。
帰国すると、今度は別の国へ行きたくなりました。
翌年には北米へ。その後もヨーロッパやオーストラリアなど、年に2、3回は海外へ出かけるようになります。
すべての旅行でビジネスクラスを利用したわけではありません。それでも長距離路線では座席の快適さを優先し、ホテルも立地や設備を重視しました。
1回の旅行で100万円を超えることもありました。
「6,000万円あると思うと、100万円がそれほど大きく見えなかったんですよ。残りは5,900万円だろう、という感覚です」
ところが、支出は航空券とホテルだけではありません。
現地での食事、鉄道やタクシー、美術館、買い物。さらに帰国後の日常生活にも当然お金はかかります。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月平均の実収入は13万1,456円、可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円。平均では可処分所得を消費支出が約3万円上回っています。
隆夫さんも旅行代だけは把握していました。しかし、「年間で全部合わせていくら使ったか」は計算していなかったのです。
