夢を遠ざけていた、夢のために使っていたお金
総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)」によると、2025年の二人以上の世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円、貯蓄保有世帯の中央値は1,264万円でした。さらに、年間収入を5つのグループにわけた最上位層は年収952万円以上で、平均年間収入は1,324万円、平均貯蓄現在高は2,878万円となっています。一方、平均負債現在高は1,335万円です。
ここでいう貯蓄には預貯金だけでなく、有価証券や生命保険なども含まれます。また、最上位層の平均世帯主年齢は52.4歳であり、39歳の健一さんと単純に比較することはできないでしょう。それでも、年収と資産額が同じものではないことはわかります。当然ながら、どれだけ高い収入があっても、その分だけ使ってしまえば、将来のためのお金は残りません。
そこで健一さんと美咲さんは、まず毎月一定額を先に貯蓄へ回し、残ったお金で生活する仕組みに変えることにしました。
大切なのは、なににお金を使うかではなく、自分たちの本当の目的に沿って使えているかどうかです。
外食や旅行をすべてやめたわけではありません。ステータスカードへの申し込みについても、健一さんはいったん見送ることにしました。
「前だったら、届いた瞬間に申し込んでいたと思います。でも、いまはまず自分たちの土台を作りたいです」
皮肉なことに、健一さんは老後を豊かにするためだと思い、仲間と歩調を合わせてきました。いい店に行き、いいものを持ち、選ばれた人に届くカードを目指した。――しかし、その行動の積み重ねが、結果として健一さんが最も望んでいた老後を遠ざけていました。
夢を持つこと自体は、悪いことではありません。むしろ、どんな人生を送りたいかを考えることは、お金と向き合ううえでとても大切です。
ただし、その夢の「見た目」だけを先に手に入れようとすると、本当に必要なものを失ってしまうことがあります。健一さんにとってステータスカードは、成功の証になるはずでした。しかし実際には、自分たちがどこへ向かっているのかを見直すきっかけになったのです。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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