三菱商事、フィリピン巨大財閥へ出資拡大の狙い
三菱商事は、フィリピン最大級の財閥アヤラ・コーポレーションへの出資比率を引き上げる方針を固めました。経済上の持ち分を4.7%から15%へと引き上げる445億ペソ(約700億円)規模の取引です。
アヤラ側は約200億ペソの新規資金を得て、負債の圧縮や自社株買い、新規事業への投資に充てる計画としています。1株650ペソという取得価格は、直近の終値に対して約22%のプレミアムを乗せたもので、アヤラ全体の企業価値はおよそ4033億ペソと評価されました。取引完了後、三菱商事の議決権比率は20%まで高まる見通しです。
両社の関係は今回始まったものではありません。今回の提携は約半世紀にわたる事業アライアンスの延長線上にあり、アヤラのジャイム・アウグスト・ゾベル・デ・アヤラ会長は、今回の合意を単なる資本注入ではなく、価値観や長期的視野、健全なガバナンスを共有する関係の証と位置づけています。
とりわけ消費者向け事業での協業は、すでに具体的な形になりつつあります。三菱商事は2024年、アヤラのベンチャーキャピタル部門「ACベンチャーズ・ホールディング」に50%出資する合弁契約を締結しました。ACベンチャーズはフィリピン最大のスーパーアプリ「GCash」の運営元であるGフィンテック・イノベーションズ(Mynt)に約13%出資しています。この合弁を通じて、三菱商事は事実上GCashの成長戦略に関与する立場を得ました。
国民の約8割が利用するとされるGCashの顧客基盤を活用し、決済にとどまらない新たな消費者向けサービスを共同開発していく構想です。さらに三菱商事は、コンビニエンスストア「ローソン・フィリピン」をグループ傘下に持ち、通信大手グローブ・テレコムを擁するアヤラとの間では、小売・通信・金融をまたいだ生活インフラ「スマートライフ」構想の実現も視野に入れています。今回の出資拡大を機に、両社はこうした消費者向け事業での協業を深めるとともに、不動産やエネルギー分野での連携も強化していく見込みです。

