比史上最大のIPO、初値「横ばい」の真相
10月20日、フィリピン証券取引所(PSE)で、モバイルウォレット「GCash」を運営するMynt社が、同国史上最大規模となる新規株式公開(IPO)を実施しました。
Myntが売り出した株式数は約80億3,000万株で、公開価格は1株あたり6.60ペソ。オーバーアロットメント(追加売り出し)を含めた調達規模は最大約609億ペソ(基本募集規模は約530億ペソ)に達し、2021年に記録を打ち立てた食品大手モンデ・ニッシンのIPOを上回る過去最大規模となりました。
調達の内訳を見ると、新規発行が16億1,000万株であるのに対し、既存株主による売り出しは64億2,000万株に上ります。会社側が手にする成長資金は新株発行分の約106億ペソ(諸費用控除前)にとどまり、大半は既存株主への払い出しとなります。今回のIPOは、企業の資金調達であると同時に大株主による資金回収の色合いも濃い内容です。なお、新株調達資金のうち約6割は、クレジットテック(与信)事業の拡大に充てられる計画です。
注目された初日の値動きは極めて落ち着いたものでした。終値は6.60ペソと公開価格と同値で引け、日中高値も6.76ペソにとどまり、新興テック銘柄によく見られる「初値急騰」の展開には至りませんでした。
背景にあるのは外国人投資家の売り圧力です。初日に海外勢は約11億1,000万ペソを売り越しており、IPOの割り当てを受けた投資家が初日に利益確定やポジション調整の売りを出したと見られます。一方で、その売り注文を国内の個人投資家や機関投資家が下値でしっかりと吸収した格好です。
もっとも、株価が横ばいだったからといって、これを「失敗」と見る必要はありません。当日のフィリピン総合指数(PSEi)は4営業日続伸していたものの、中央銀行(BSP)の金融政策判断を見極めたいとする慎重姿勢が市場に漂っていました。そうした環境下、巨額の売り物を消化しながら一度も公開価格を割り込まずに初日を乗り切ったことは、市場の需給が極めて強固であった証左と言えます。
