慎重さの置き場所を間違えない…有期で採るなら最低限そろえたい5つ
高梨社長のように、適性を見るために「まずは有期で」と考える会社は少なくありません。ただ、試用期間として有期契約を使う場合は、運用を少しでも間違うと期間の定めのない契約と判断されるリスクを伴います。
それでも有期契約を使うのなら、次の5つを最低限そろえてください。
- 求人の段階から「有期雇用で採用し、期間満了で終了すること」「適性を判断したうえで、正社員登用の可能性があること」を明示すること
- 採用面接・内定通知書・労働条件通知書・就業規則のすべてで説明を一致させ、「試用期間のようなもの」「正社員になれる」といった言葉は使わないこと
- 有期契約のあと正社員にする場合は、契約を「更新」するのではなく、新しく正社員の契約を結ぶこと
- 就業規則等に正社員登用基準や手続き方法などを明文化すること
- 自動的に正社員化するのではなく、正社員登用基準に基づき判断すること
裏を返せば、ひとつでも欠ければ試用期間と判断されるおそれがあるということです。
特に危険なのが、正社員として求人を出しておきながら、内定段階で有期契約を提示する方法です。「いずれ正社員に」という発言があれば、その期間は試用期間と判断される可能性が高くなります。
採用のミスマッチが怖いという経営者の気持ちはとても理解できます。しかし、方法を間違えると思わぬ紛争リスクを抱え込むことになりかねません。
こうした不安定な運用を行うよりも、期間の定めのない契約で採用し、試用期間を置き、本採用するかどうかをきちんと判断する。これが遠回りに見えて、はるかに堅実な経営判断です。
高梨社長の落ち度は、慎重すぎたことではなく、慎重さの置き場所を間違えたことです。会社を守るのは契約書ではなく、期間の目的をどう決め、どう伝え、どう運用したかなのです。
桐生 由紀
Authense 社会保険労務士法人
代表社会保険労務士
