「6か月間は契約社員って書いてあるのに…」本採用を見送った41歳男性から届いた“解雇は無効”の通知書。原因は〈面接での軽はずみなひと言〉【社労士が“有期契約と試用期間の違い”を解説】

「6か月間は契約社員って書いてあるのに…」本採用を見送った41歳男性から届いた“解雇は無効”の通知書。原因は〈面接での軽はずみなひと言〉【社労士が“有期契約と試用期間の違い”を解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「最初の6か月は契約社員で、問題なければ正社員にしよう」。採用の失敗を避けたい経営者がよく使う方法です。有期契約なら期間が来れば雇用契約を終了できる——そう考える経営者は少なくありません。ところが、その期間を設けた目的が「本人の適性を見るため」だった場合、契約書に期間が書いてあっても、それは契約期間ではなく試用期間だと判断されることがあります。有期雇用と試用期間の危険な関係性について、企業の労務支援に強い社労士の桐生由紀氏が解説します。※本記事に登場する人物および企業はすべて仮名であり、事例はフィクションです。

1か月後、代理人弁護士から届いた通知書

その1か月後、川島さんの代理人の弁護士から、会社宛に通知書が届きます。通知書には、以下のように記されていました。

 

「本件契約の6か月は通知人の適性を評価・判断するために設けられたものであり、契約期間ではなく試用期間である。期間満了による終了は解雇にあたり、無効である」

 

契約書に「6か月間は契約社員」と記載されているのに、なぜ解雇になるのか――高梨社長は納得がいきませんでした。

 

「契約書に期間を書けば有期になる」は誤解

契約書に雇用期間を書いておけば有期契約になる——高梨社長のこの考え方は実務でよくあるものですが、裁判所の見方は違います。

 

採用のときに契約期間を設けても、その目的が「本人の適性を見極めるため」なら、その期間は原則として試用期間とみなす。「期間が来れば当然に終わる」という明確な合意があるなど、特別な事情がある場合は別——これが神戸弘陵学園事件(最判平成2年6月5日)の判断です。

 

判断の分かれ目になるのは、「期間が来れば雇用契約が当然に終わる」という合意が、契約書と採用時の説明などから読み取れるかどうかです。近年の裁判例でも、この点が判断の中心になっています。

 

会社が敗れたのは、採用が決まったあとの面談で人事担当者が「長めの試用期間のようなもの」「来年には正社員です」と説明していた事案です。1年という期間は試用期間にあたり、最初から期間の定めのない契約だったと判断されました(TBWA HAKUHODO事件・東京高判令和7年4月10日)。

 

高梨社長の「様子を見させてください」「問題がなければ正社員に」は、この事案の説明と限りなく近い言葉です。

 

試用期間と判断されると、契約は最初から期間の定めのないもの(無期契約)だったことになります。終わらせるには「本採用しない」という判断が必要で、これは解雇の一種です。誰が見ても納得できる理由がなければ認められません。

 

能力不足が理由なら、どんな水準を求め、足りない点をどう伝え、改善の機会を与えたのかを会社が説明することになります。争いに負ければ、社員としての立場は続いていたことになり、争っていた間の給料も払うことになるのです。

次ページ慎重さの置き場所を間違えない…有期で採るなら最低限そろえたい5つ

※プライバシーに配慮するため、登場人物の情報に一部変更を加えています。

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