1か月後、代理人弁護士から届いた通知書
その1か月後、川島さんの代理人の弁護士から、会社宛に通知書が届きます。通知書には、以下のように記されていました。
「本件契約の6か月は通知人の適性を評価・判断するために設けられたものであり、契約期間ではなく試用期間である。期間満了による終了は解雇にあたり、無効である」
契約書に「6か月間は契約社員」と記載されているのに、なぜ解雇になるのか――高梨社長は納得がいきませんでした。
「契約書に期間を書けば有期になる」は誤解
契約書に雇用期間を書いておけば有期契約になる——高梨社長のこの考え方は実務でよくあるものですが、裁判所の見方は違います。
採用のときに契約期間を設けても、その目的が「本人の適性を見極めるため」なら、その期間は原則として試用期間とみなす。「期間が来れば当然に終わる」という明確な合意があるなど、特別な事情がある場合は別——これが神戸弘陵学園事件(最判平成2年6月5日)の判断です。
判断の分かれ目になるのは、「期間が来れば雇用契約が当然に終わる」という合意が、契約書と採用時の説明などから読み取れるかどうかです。近年の裁判例でも、この点が判断の中心になっています。
会社が敗れたのは、採用が決まったあとの面談で人事担当者が「長めの試用期間のようなもの」「来年には正社員です」と説明していた事案です。1年という期間は試用期間にあたり、最初から期間の定めのない契約だったと判断されました(TBWA HAKUHODO事件・東京高判令和7年4月10日)。
高梨社長の「様子を見させてください」「問題がなければ正社員に」は、この事案の説明と限りなく近い言葉です。
試用期間と判断されると、契約は最初から期間の定めのないもの(無期契約)だったことになります。終わらせるには「本採用しない」という判断が必要で、これは解雇の一種です。誰が見ても納得できる理由がなければ認められません。
能力不足が理由なら、どんな水準を求め、足りない点をどう伝え、改善の機会を与えたのかを会社が説明することになります。争いに負ければ、社員としての立場は続いていたことになり、争っていた間の給料も払うことになるのです。
