顧問税理士には2年前から見えていたはずなのに
そして今回、税理士である筆者が最も考えさせられたのが、この点でした。
高橋建工にも当然、顧問税理士がいました。2年前の決算書も見ていたはずです。年商2億円。利益1,400万円。借入金3,000万円。社長の年齢も分かっていたでしょう。
その後、売上が減っていくことも、従業員が減っていくことも、決算書や試算表を見ていればある程度分かったはずです。
もちろん、顧問税理士にM&Aを提案する義務があるわけではありません。税理士の本来業務は税務申告や税務相談です。
しかし、中小企業の経営者に最も近い専門家の一人が顧問税理士であることも事実です。
だからこそ、
「社長、後継者はどうするんですか?」
「この会社、5年後は誰が経営しているんですか?」
「もしお子さんが継がないなら、第三者への譲渡もありますよ」
そんな一言があってもよかったのではないか。今回の相談を受けて、私はそう感じました。
「社長、この会社、将来どうしますか?」の一言があったなら…
私は、税理士がM&A仲介をする必要があるとは思っていません。買い手を探したり、交渉したり、契約をまとめたりすることまで、すべての税理士ができる必要はありません。
しかし、「この会社は、今なら第三者に引き継げる可能性がある」と気づくための知識は持っておいた方がいい。そして、必要であればM&Aの専門家につなげる。
「社長、この会社、将来どうしますか?」
何気ないその一言が、数年後の経営者の人生を大きく変えることがあります。「2年前に相談してくれていたら…」そんな言葉を、できるだけ言わずに済むように。税理士がM&Aについて知っておく意味は、そこにもあるのだと思います。
もちろん、税理士だけではなく、経営者仲間や中小企業診断士、社会保険労務士、弁護士や財務コンサルタントなど、中小企業の周りに居る方にも、同じような役割が期待されます。
※ この事例は実話に基づいていますが、秘密保持のため、エリアや業種などを適宜変更しています。
都 鍾洵
税理士
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