夫婦で計算した65歳までの5年間
まず確認したのは、毎月の生活費でした。
住宅ローンは完済済みですが、固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金、保険料などは今後もかかります。さらに家電の買い替えや医療費といった臨時支出も見込んでおく必要があります。
一方、恵美さんは週4日ほどパートで働いており、当面は続ける予定です。
「妻の収入を全部生活費に入れる前提にはしたくなかったので、生活費、税金や社会保険料、旅行費、それから予備費まで書き出しました」
旅行についても、「好きなだけ使う」のではなく、年間50万円を上限に予算を設定。65歳までの5年間で必要になる金額を試算し、その後は年金を中心とした家計へ移行できるかを確認しました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の実収入は平均25万4,395円、可処分所得は22万1,544円。一方、消費支出は26万3,979円となっています。平均的な家計でも、退職後は年金などの収入だけでなく、保有資産を含めて収支を考える必要があることが分かります。
何度か計算した末、隆司さんは再雇用を希望しないことにしました。
定年から2ヵ月後、夫婦は6泊7日で北海道へ。函館から札幌、旭川へと移動し、以前から行きたかった場所を巡りました。
「旅行そのものもうれしかったですけど、日曜日に『明日は会社だ』と思わなくていいのが不思議でしたね」
とはいえ、「もう一生働かない」と決めたわけではありません。半年ほど休んだあと、条件の合う仕事があれば週2~3日程度働くことも考えているそうです。
「会社員を続けるか、完全に引退するかの二択じゃなくてもいいんですよね。今は妻と出かけられるうちに出かけたい。それで時間が余るようになったら、また働けばいいと思っています」
内閣府の同調査では、現在仕事をしていない人が働いていない理由として、「仕事以外の趣味や社会活動に時間を費やしたいから」を挙げた人は13.6%でした。 また、内閣府『国民生活に関する世論調査(令和6年8月調査)』では、自由になる時間が増えた場合にしたいこととして「旅行」が61.8%で最多となっています。
働き続ければ、その分だけ収入を得られ、資産を取り崩す時期も遅らせられます。一方で、仕事を続ける期間を決める際には、お金だけでなく、自由に使える時間をいつ確保するかという視点もあります。
退職金の額だけを見て退職できるかどうかを判断するのではなく、年金を受け取るまでの収支、その後の生活費、臨時支出まで具体的に計算する。そのうえで、働く時間と自分たちのために使う時間をどう配分するかを考えることも、定年を迎える際の選択肢の一つです。
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