これ、何?」定年退職の翌朝、食卓に置かれていた1枚の紙
60歳の正志さん(仮名)は、メーカーに40年間勤め、定年退職を迎えました。
最後の出勤日、職場では同僚たちから花束を贈られ、帰宅すると58歳の妻・美紀さん(仮名)が夕食を用意して待っていました。
「40年間、本当にお疲れさま。明日からは少しゆっくりできるね」
食卓には正志さんの好きな料理が並び、夫婦でビールを飲みながら、これまでの出来事を振り返ったそうです。
正志さんは営業職として長く働き、管理職になってからは帰宅が午後9時を過ぎる日も珍しくありませんでした。子ども2人はすでに独立し、現在は夫婦2人暮らしです。
「これからは朝寝坊もできるし、平日にゴルフにも行ける。まずは何も考えずに過ごしたいと思っていました」
退職金は約2,000万円。住宅ローンは完済しており、65歳からの年金受給までの生活費も、貯蓄と再雇用による収入で賄う予定でした。
再雇用先での勤務が始まるのは約1ヵ月後。その間は休暇を楽しもうと考えていたのです。
ところが定年退職の翌朝、正志さんが朝食を取ろうと食卓に座ると、一枚の紙が置かれていました。
表には「これからの家事分担」と書かれています。
月曜日と木曜日は掃除機がけ、火曜日と金曜日は夕食作り、毎朝のゴミ出し、週末の買い物。曜日ごとに担当する家事が細かく記されていました。
「これ、何?」
正志さんが尋ねると、美紀さんは「明日から家にいる時間が増えるでしょう。少しずつお願いしたいと思って」と答えました。
正志さんは思わず、「退職したばかりなんだから、しばらく休ませてくれよ」と口にしたそうです。
すると、美紀さんの表情が変わりました。
「休むのはいいけど、私は今までどおり家事を全部やるの?」
美紀さんは結婚以来、子育てと家事を担いながらパート勤務を続けてきました。現在も週3日、近所の店で働いています。
正志さんも休日には買い物に付き合ったり、食器を片づけたりすることはありましたが、毎日の食事や洗濯、掃除はほとんど妻任せだったといいます。
「仕事を頑張ってきたのは自分だと思っていました。でも、妻もずっと家のことをやってきたんですよね。そのときは、そこまで考えが回りませんでした」
