夫婦が確認した毎月の生活費
夫婦が最初に確認したのは、退職金の残高ではありませんでした。
毎月の生活費、固定資産税、車の維持費、旅行費、今後想定される住宅修繕費。さらに、公的年金を本格的に受け取るまでの期間に、どの程度の資金が必要になるかを書き出しました。
「2,700万円あるから大丈夫、とは考えないようにしました。退職金は一度使えば減りますから」
夫婦は自分たちの実際の支出を基準に試算しました。美和さんは週3日のパートを当面続ける予定です。生活防衛資金と住宅修繕などに備える資金には手を付けず、年金受給までの生活費を別に確保。それでも余裕があると確認してから、浩二さんは会社に退職の意思を伝えました。
退職から2ヵ月後、浩二さんは3泊4日の一人旅に出ました。
以前なら週末を利用して急いで回っていた場所です。今回は平日に出発し、気になった駅で途中下車して写真を撮りました。
帰宅すると、美和さんが「どうだった?」と聞きます。
「楽しかった。でも毎月旅行しなくてもいいかな」
「もう飽きたの?」
「違う。いつでも行けると思ったら、焦らなくなった」
現在は写真を撮りに出かけるほか、家事も以前より多く担当しています。完全に仕事から離れ続けると決めたわけでもなく、「やりたい仕事があれば週2、3日くらい働くのもいい」と考えているそうです。
内閣府の同調査では、収入を伴う仕事をしていない人が働いていない理由として、「仕事以外の趣味や社会活動に時間を費やしたいから」と答えた人も13.6%いました。働かない、あるいは働く時間を減らすことを選ぶ人にも、それぞれの事情があります。
定年後も働けば収入を確保できる一方、仕事に充てた時間を後から取り戻すことはできません。だからといって、十分な資金計画を立てずに早期退職するのも現実的ではないでしょう。
何歳まで働くかを年齢だけで決めるのではなく、必要な生活費や年金受給までの資金を確認したうえで、これからの時間を何に使いたいのかを考える。定年は仕事を続けるか辞めるかだけでなく、自分の時間とお金の配分を見直す機会にもなりそうです。
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